今回は「歯石を取るときは痛いのか」について書いていきます。
歯石を取るときは痛い?
結論から言うと、歯石を取ること自体は痛いことではありません。しかしこれは歯や歯茎の状態が良い場合。歯石が多くついていたり歯茎が腫れていると、歯石を取るときに痛みを感じやすくなります。
歯石の取り方で痛いのは
①歯茎が腫れているとき
②歯周ポケットの奥深くに歯石がいるとき
③スケーラー(器具)による痛み
1. 歯茎が腫れているとき
歯肉炎・歯周炎などによって歯茎が腫れている場合は、歯磨きでさえも痛いですよね。この状態のときに歯医者で歯石を取るとなると、痛みが出やすいです。
▼歯肉炎・歯周炎・歯周病の違いはこちらでまとめています。
https://matsumoto.or.jp/toothteeth/toothbrushing-pain/
歯石(しせき)とは
歯垢が長期間のうちに石灰化したもの。下顎の前歯の内側,上顎の臼歯の外側に沈着しやすい。口腔に露出している歯面に付着している歯石は,淡黄色ないし黄褐色を呈していることが多いが,まれに黒緑色ないし黒色を呈する歯石が付着していることがある。
引用 コトバンク
もととなる歯垢(プラーク)=細菌の塊です。ゆえに、歯石がついている=歯茎に炎症が起こっていると言えるでしょう。逆に言えば、歯石をとれば歯茎の炎症が収まるということです。
歯石は歯医者でしか取ることができないので、歯石がついている限り歯茎の腫れは完全にはおさまりません。しかし歯医者に行く日までに毎日しっかり歯磨きを行い、可能な限りで歯茎の腫れを抑えて行くようにすると、多少痛みが軽減するかもしれません。
2. 歯周ポケットの奥深くに歯石がいるとき
歯周ポケットの奥深くに歯石がある場合は、痛みを感じることがあります。
上図のように歯周ポケット内によごれがたまっていても、それが歯垢(プラーク)なら歯磨きで取ることができます。しかし長い間放置され、歯石となってしまった場合は歯医者に行かないと取れません。
しっかり歯磨きしているのに歯茎の腫れがおさまらない・・・という方は、もしかしたら歯周ポケットの内部に歯石がついているのかもしれません。
歯周ポケットの奥深くに歯石がついている場合は、歯石の取り方によっては痛みを生じやすいので麻酔をします。あまりに奥深くに歯石がついている場合は、歯茎を切り開いて歯石を取るという、「手術」になることも。それほど、歯石がついているのは歯・歯茎にとって良くないことなのです。
3. スケーラー(器具)による痛み
超音波スケーラーを使って歯石を取るときは、超音波の振動や同時に出る水によってしみるような痛みを感じることがあります。
超音波スケーラーとは
超音波スケーラーは、超音波という非常に短い周波の波動を機械的な微振動に変換し、歯石を揺さぶり崩すようにして剥がしていく歯科医療用機器である。(1)超音波の振動で歯石を破砕していくため、使用時に力を入れる必要がなく、術者・患者ともにストレスが少ない、(2)チップの振動が当たったところから歯石を崩すように剥がすため、歯石へのアクセスが容易、といった特長を持つ。
歯石を取らねばならない理由
歯石を取らなければならない理由は、お口の中の健康を保つためです。
1. 歯石は歯垢が硬化したもの
歯石は、歯垢(プラーク)が時間の経過とともに硬化してできたものです。歯垢は細菌の塊であり、これが唾液中のカルシウムやリンと結びついて硬くなることで歯石が形成されます。歯垢は通常の歯磨きで除去できますが、歯石は一度形成されると、歯磨きで落とすことは出来ず、専門的なクリーニングでしか除去できません。
2. 歯周病の原因になる
歯石は歯と歯茎の境目にたまりやすく、その部分の細菌が繁殖しやすい環境を作ります。この細菌が歯茎に炎症を引き起こし、歯周病の主な原因となります。歯周病は、進行すると歯を支える骨や組織が破壊され、最悪の場合、歯が抜けてしまいます。
3. 口臭の原因になる
歯石の表面は非常に粗く、そのために細菌や食べ物のカスが付着しやすくなります。これが分解される過程で悪臭が発生し、口臭の原因となります。歯石を放置すると、口臭が強くなるだけでなく、口腔内全体の衛生状態が悪化します。
4. 虫歯のリスクが高まる
歯石が歯の表面に付着していると、細菌が歯の表面に直接影響を与えやすくなり、虫歯になりやすくなります。特に歯と歯茎の境目に歯石があると、そこから虫歯が進行することが多いため、早期に除去することが推奨されます。
5. 歯茎の健康を守るため
歯石がたまると、歯茎が炎症を起こし、出血や腫れを引き起こすことがあります。この状態が続くと、歯茎が下がり、歯がぐらつく原因にもなります。歯茎の健康を維持するためにも、定期的に歯石を取ることが重要です。
細菌の塊である歯垢(プラーク)が固まったのが歯石です。加えてその歯石自体表面がザラザラしているため、歯垢(プラーク)・細菌がつきやすい状態となるという悪循環が起こります。
歯石の放置は、歯茎の腫れなど歯周病に限ったことではありません。歯石の下に虫歯がある(隠れている)場合もあります。虫歯の治療をした後「すぐ詰め物が取れた」「すぐ被せ物が取れた」「また虫歯になった」などを防ぐためにも、歯石を取ることが重要です。全ての治療は歯石を取ることから始まると言っても過言ではありません。
歯石を取るときの痛みについてまとめ
歯医者さんでこまめに歯石を取ってもらったり、クリーニングを受けている方は、歯石がつきにくく痛みも生じにくいです。それに対して長い間歯石を放置していた方は、歯石がガチガチに固まって取れづらく、痛みも生じやすいです。そのため、3~6ヶ月おきに定期健診(クリーニング)を受けて、歯垢や歯石を落としてもらいましょう。