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歯周病・虫歯・被せ物

歯周病とは?歯肉炎との違い

歯周病とは?原因・歯肉炎との違いまとめ
	

まつもと歯科 理事長・総院長 松本 正洋

今回は「歯周病」について書いていきたいと思います。

歯周病とは

歯周病はさまざまな病気の原因になります。35〜59才の約7割が歯周病です。7割という数字は厚生労働省実施の歯科疾患調査(2010年)が元になっています。

歯周病とは、歯ぐき・歯槽骨など、歯の周りの組織に炎症が起こっている状態の総称です。歯槽膿漏(しそうのうろう)とも呼ばれています。

歯周病の特徴は、ほとんど痛みがなく静かに進行していくことです。そのためサイレントディシーズ(静かに進行する病気)、サイレント・キラー(静かな殺し屋)と呼ばれています。虫歯であれば痛みやしみることで気がつきますが、歯周病はほとんど痛みがないので、気付かれにくいのです。

歯周病の原因

女性

歯周病は、さまざまな因子が組み合わさって発症します。歯周病のうち、主なのはやはり歯肉炎と歯周炎です。それらの原因は多くがバイオフィルム(歯垢・プラーク)です。歯の汚れですね。その他、遺伝的要因であったり喫煙やストレス、不規則な食生活など、さまざまな要因が組み合わさって歯周病は発症します。

ちなみに歯垢を構成する成分のうち7割以上は細菌。歯垢1mgには1億個の細菌が含まれているといいます。歯垢(プラーク)=細菌のかたまりといえますね。

歯垢=細菌のかたまりを除去することが重要

歯周病ケアに最も効果的なのは歯磨きです。歯垢(プラーク)が原因で歯周病が起こっているので、その歯垢(プラーク)を徹底的に除去することが大切です。

子供の頃からやっている歯磨きなので、どうしても自己流になりがちです。歯科医院で正しい歯磨き方法を習い直すこともとても大切です。治療をしてかぶせ物(金属)、ブリッジ、インプラント等がお口の中にあると子供の頃の磨き方では磨けていません。お口にあった歯磨き方法を歯科衛生士よりレクチャーを受けて下さい。

歯周病の治療にはさまざまなものがあります。しかしどれも、患者さんがしっかり歯磨きをしてくれること前提。そのため、初めに歯磨き方法の確認を行い、しっかり磨けるようになってから本格的な歯周病治療に入っていくことが多いです。患者さんがセルフケアを頑張ってくれなければ、どの治療も上手くいかないのです。

歯周病の進行

歯周病の進行

歯ぐきが強く腫れたり、実際に痛みが出たり、という症状が出て気付いた時には、かなり歯周病が進行していて、歯が揺れてものが噛めない歯が勝手に抜けてしまうということもあります。歯を失う原因であり、歯周病以外のさまざまな病気を引き起こしたり悪化させたりします。

歯肉炎・歯周炎・歯周病の違い

歯肉炎と歯周炎の違い「歯肉炎」「歯周炎」「歯周病」の違いはどのようなものでしょうか?

簡単に説明すると、歯周病=歯肉炎+歯周炎 です。歯肉内に炎症がとどまっている「歯肉炎」とその先の組織に病気が進行する「歯周炎」に分けられます。

歯周病は歯ぐき・歯槽骨など、歯の周りの組織に炎症が起こっている状態の総称。その歯周病という大きなくくりの中に、歯肉炎や歯周炎がカテゴリーとして存在します。歯周病は歯肉炎と歯周炎に分けられます。

中程度の歯周病患者さんのもっている歯周ポケット周囲の歯肉の炎症の総面積を計算すると、手のひら位の大きさ 歯周ポケット5-6mm(ミリ)の深さの範囲の炎症×28本 72平方センチとなります。歯周病は慢性疾患ですから治療しないままでいると手のひら大の炎症が毎日放置していることになります。

歯周病=歯肉炎+歯周炎

歯肉炎の症状

歯肉炎の正式診断名はプラーク性歯肉炎。歯肉炎=歯周病の初期段階 です。

歯肉炎の症状は以下のようなものです。

✔︎歯茎が腫れる

✔︎歯ブラシなどで触れると出血する

✔︎歯周ポケットができるが3mmを超える歯周ポケット形成がない

歯肉炎の治療は原因除去、つまりバイオフィルムの除去だけです。正しいブラッシング方法を習い実践して、歯科医院でクリーニングを受けることによって改善します。

歯周炎の症状

歯周炎=歯肉炎が進んで慢性歯周炎になった状態です。

症状としては

✔︎歯茎が腫れる

✔︎歯ブラシなどで触れると出血する

✔︎歯周ポケットがさらに深くなる(3mm以上)

✔︎歯が揺れている

✔︎歯周ポケットから白い膿が出る

✔︎口臭がする

 

歯周炎は、進行具合によってさらに軽度・中等度・重度に分けられます。基本的には痛みが出にくいです。しかし炎症が急激に生じることもあります。そうなると急性症状として顕著な腫れや、強い痛みを伴うことがあります。歯周炎患者さんの70%は重度ではない歯周炎です。

レッドコンプレックスとは

レッドコンプレックス

レッド・コンプレックスとは歯周病の原因である代表的な3つの菌のことです。それらの菌の名前はタンネレラ・フォーサイシア、トレポネーマ・デンティコーラ、ポルフィロモナス・ジンジバリスといいます。歯周病にかかっている殆どの患者さんのお口からこれらの菌が検出されます。

これら以外の歯周病菌は存在していますが、特に歯周病の原因となりやすいのはこれら3つの細菌であることから、レッドコンプレックスという総称で呼ばれるようになりました。

歯周病は全身に影響を与える?

男性

歯周病は全身の健康に影響を与えます。歯科界ではもはや常識となっています。以下、歯周病によりリスクが高まる代表的な病気です。

 ✔︎狭心症心筋梗塞

心臓に血液を送る血管が狭くなったり、血管がふさがり亡くなることもある病気。

 ✔︎脳梗塞

脳の血管が血の塊などにより詰まり亡くなることもある病気。脳梗塞は命が助かっても麻痺などの後遺症が残るケースが多く中高年には要注意といえる病気です。

 ✔︎糖尿病

血液中にブドウ糖が多い状態が続いている状態。それにより組織・臓器に障害が生じる病気。糖尿病があると歯周病が悪化し、重度の歯周病があると糖尿病が悪くなります。

 ✔︎誤嚥性肺炎

口の中の食物や唾液などが病原因とともに期間内に入ることで発症する肺炎(本来は食道→胃)。原因となる菌は口の中の歯周病菌も含まれています。

歯周病がどう影響を与えるか、詳しいメカニズムが日本臨床歯周病学会のサイトにまとめられています。

 ✔︎アルツハイマー

認知症の原因として70%を占めるアルツハイマー病、脳の神経細胞が減少したり脳全体が委縮したり脳の神経が糸くずがもつれる様な変化をおこしたりします。脳に「老人斑」というシミが広がるのも特徴です。この「老人斑」が歯周病原因菌から作られるという事が明らかになりました。歯周病の予防ならびに治療によりアルツハイマー病の発症と進行を遅らせることが出来ます。

自分は大丈夫?歯周病チェックリスト

男性

以下は歯周病チェックリストです。1つでも当てはまれば、歯周病の可能性があります。

✔︎ここ1年ほど歯医者に行っていない

✔︎歯茎の色が薄ピンクではなく、赤い色の部分がある

✔︎歯と歯の間の歯茎が丸っこい

✔︎疲れやストレスを感じると歯が痛むときがある

✔︎歯磨きをしたのに、歯の表面を舌で触るとザラザラする

✔︎歯磨きのときに痛む・出血するときがある

✔︎歯茎を押すと白い膿が出てくることがある

✔︎歯がのびた様な感じがする(歯ぐきがちぢんだ様な感じがする)

歯周病は、目立った痛みなどが出にくく自分で気付かないうちに進行していく恐ろしい病気です。歯医者で検診を受けましょう。

歯磨きのときに痛いのは歯周病?

歯ブラシ

歯磨きのときに痛む原因はいくつか考えられます。歯周病に限らず、歯磨きのときに痛む原因はおおまかに4つ。

  1. 歯周病による歯茎の炎症
  2. 磨きすぎ・間違った磨き方によって付いた(力が入りすぎている、歯ブラシの毛が固すぎる、歯磨き剤があっていない等 原因があります。)
  3. デンタルフロス、糸ようじ、歯肉ブラシなどで傷つくこともあります。
  4. 知覚過敏(痛むというよりしみる感じ)

 

痛みとともに出血がある場合は歯周病である可能性が高いため、歯科医院に行って治療を受けましょう。歯周病の初期段階(=歯肉炎)であれば正しい歯磨き方法を習うことで改善することがあります。

②の傷に関しては、歯磨きの力が強い人に多い症状です。歯磨きはやさしく磨くようにしましょう。歯科医院に行って正しい歯磨き方法・ブラッシング圧を習うと改善するでしょう。

④のしみるような症状がある場合は、磨きすぎや噛み合わせなど様々な原因が考えられます。また単なる知覚過敏ではなく虫歯である可能性も。いずれにしろ歯科医院で診てもらうことをおすすめします。

歯周病と歯肉炎に関するQ&A

歯周病と虫歯の違いは何ですか?

歯周病と虫歯では原因になる細菌が違います。虫歯は虫歯菌が出す酸で歯の表面が溶けて穴が出来る病気を指し、歯周病は歯周病菌が出す毒素で歯茎に炎症が起こり重症化すると歯槽骨が溶けて歯が抜ける病気です。

歯肉炎と歯周炎の違いは何ですか?

歯肉炎は歯肉内に炎症がとどまっている状態を指し、歯周炎は歯肉から先の組織に病気が進行している状態を指します。

歯肉炎の症状はどのようなものがありますか?

歯肉炎の症状には、歯茎の腫れ、歯ブラシで触れると出血する、歯周ポケットができるが3mmを超えないなどがあります。

まとめ

歯周病は静かに進行していきますが怖い病気です。歯周病は歯垢の中の細菌が出す毒素が原因で、歯だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼし、心臓疾患、脳梗塞、糖尿病、アルツハイマーなどにつながる可能性があります。

歯周病は歯肉炎(初期段階)と歯周炎(進行段階)に分かれ、早期発見と適切な治療が必要です。歯周病は静かに進行しますが、悪化すると全身への悪影響もあるため、適切なケアと定期的な歯科健診で歯を守りましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

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