今回は「電動歯ブラシを使う時の歯磨き剤の量」について書いていきたいと思います。
電動歯ブラシと歯ブラシの比較についてはこちらでまとめています。
歯磨き剤の種類
現在、歯磨き剤はさまざまなものが販売されています。ドラッグストアなどで数多く売られている歯磨き剤の中から、自分に合った1つを選ぶのは簡単ではありませんよね。
主に販売されている歯磨き剤は
①虫歯予防がメインの歯磨き剤
②歯周病予防がメインの歯磨き剤
③ステイン(着色汚れ)の除去がメインの歯磨き剤
④研磨剤が含まれていない歯磨き剤
⑤泡の出にくい歯磨き剤(電動ハブラシ専用もあります)
⑥インプラント治療されている方用の歯磨き剤(フッ素が入ってません)
①虫歯予防がメインの歯磨き剤
虫歯予防に有効な成分としておなじみの「フッ素」。市販の歯磨き剤にはフッ素が含まれていることが多く、どの歯磨き剤を選んでも虫歯予防効果は得られるでしょう。
しかし歯磨き剤に含まれるフッ素の濃度は、濃ければ濃いほど虫歯予防効果が高いです。しかし万が一飲み込んでしまった場合などを考慮し、市販の歯磨き剤に含まれるフッ素の濃度は定められています。
現在その基準値は1500ppm。
2017年医薬部外品として1500ppmほどの高濃度フッ化物を配合した歯磨き剤が市販できるようになりました。この歯磨き剤は歯周病や加齢の影響で起こりやすい「根面う蝕」(歯根のむし歯)の予防に効果があります。
「ppm」とは「parts per million(パーツ・パー・ミリオン)」の頭文字をとった言葉で、「ピーピーエム」と呼びます。またppmは「g(グラム)」や「L(リットル)」などの”単位”ではなく、「100万分の1」という”割合”を表す言葉です。
ppmは%(パーセント)と同じように使います。ppmは百万分の1を表しますので、100万ppmが100%と等しくなります。(ですので、ppmの上限値は100万です。少量を表すための表現ですので、100万ppmという使い方はまずしませんが)。
引用 備える.jp
病院や歯科医院で、治療の仕上げにフッ素を塗られたことはありませんか?30分間は飲んだり食べたりを控えてください・・・というあれです。そのような病院や歯科医院で使用されるフッ素の濃度は9000ppmと、歯磨き剤に比べるとかなり高濃度。定期的に塗ってもらうことで、虫歯予防効果が大いに得られます。
このような単位や目安を知っておくと、歯磨き剤を選ぶときの参考になるでしょう。
②歯周病予防がメインの歯磨き剤
歯周病予防用の歯ブラシとの併用がおすすめ。
歯周病予防を主に謳っている歯磨き剤は、歯茎を引き締める成分や殺菌に効果的な成分が含まれています。
歯茎の腫れや歯茎からの出血、歯周病が気になる方は歯周病予防の歯磨き剤を使用してみましょう。歯周病の主な原因であるバイオフィルム(歯垢、プラーク)は歯ブラシで取れますが、歯磨き剤も併用することでより効果を感じられるでしょう。
また歯周病が気になる方は、まずは歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握ります。歯ブラシの毛先を歯周ポケットに入れ込むイメージで磨くとより効果的です。小刻みに往復運動(一ヶ所20回位)をしていきます。そのため毛先がフラット(平切り)なものや山切りのものよりも、毛先が細くなっている歯ブラシの方が適しています。
▼歯ブラシの毛先を歯周ポケットに入れ込むようにして細かく動かす。(ただし力を入れないで!)
③ステイン(着色汚れ)の除去がメインの歯磨き剤
歯科医院でのホワイトニングほどの効果は期待できません。
正直な話、市販の歯磨き剤で「歯科医院の施術と同じホワイトニング効果」を得るのは現実的ではありません。それは歯科医院で使用するホワイトニング薬剤と、市販の歯磨き剤に使われる歯を白くする成分は、種類が異なるから。また歯科医院で受けるホワイトニングと同レベルのものを市販品に配合するのは、法律で禁止されています。
そのため歯磨き剤では「現在ついているステイン(着色汚れ)の除去」というよりは、「ステイン(着色汚れ)が付着・定着するのを予防する」という意味で使用すると良いでしょう。また歯科医院でホワイトニングを受けた後、その白さを維持するために使用するのも正しい使い方です。
④研磨剤が含まれていない歯磨き剤
ほとんどの歯磨き剤には「研磨剤」が含まれています。
研磨剤と聞くと歯が削れるのでは・・・と思ってしまいますよね。これは間違いではありません。
研磨剤が含まれていることで歯の表面についた歯垢(プラーク)や汚れは落ちやすくなりますが、歯を傷つけてしまうとかえって虫歯になるリスクが上がります。また入れ歯を清掃するときも、入れ歯自体を傷つけてしまうので歯磨き剤は使わないようにしましょう。
それと歯肉退縮により露出した象牙質とエナメル質の虫歯を予防効果のあるものも出ています。
基本的にはさほど問題はありませんが、歯の質が弱っているご高齢の方などは、研磨剤が入っていない歯磨き剤をおすすめします。研磨剤が入っていない歯磨き剤は、ドラッグストアなどよりも病院など専門機関で販売されていることが多いです。最近ではインターネットでも購入できます。
それと歯肉退縮により露出した象牙質とエナメル質の虫歯予防効果のあるものも出ています。
⑤泡の出にくい歯磨き剤
ほとんどの歯磨き剤には「発泡剤」も含まれています。
発泡剤は泡立ちを良くするための成分です。歯磨き剤を使用していると唾液が多く出て磨きにくい・・・という方は、発泡剤が含まれていない歯磨き剤を使用すると良いでしょう。発泡剤が含まれていないことで、実際は不十分なのにさっぱりして満足してしまう・・・というのも防ぐことができるでしょう。
また長く磨けない場合は、最初は歯磨き剤なしで磨いてその後に歯磨き剤を付けて磨く「2度磨き」もいいでしょう。
発泡剤が含まれていない歯磨き剤も、研磨剤の時と同じで、ドラッグストアなどよりも病院など専門機関で販売されていることが多いです。最近ではインターネット上でも購入できるでしょう。
歯磨き剤の必要性
歯磨き剤を使った場合と使わない場合では使った方がプラーク(歯垢)の落ちがいいことが実験で証明されています。
歯磨き剤の効果
まず、なぜ粉じゃないのに歯磨き粉と言うのでしょう? かつては粉状の歯磨き剤が主流だった時期があり、歯磨き剤全般を「歯磨き粉」と呼ぶのは名残です。ここでは歯磨き剤と呼んでいきます。
歯磨き剤には、
✔︎虫歯を防ぐ
✔︎歯周病を防ぐ
✔︎ステイン(着色汚れ)を落とす
✔︎口臭を予防する
✔︎歯垢(プラーク)をつきにくくする
などさまざまな効果があります。
最近は歯質の強化をねらったフッ化物(フッ素)入り歯磨き剤、炎症を抑える薬剤が含まれた歯周炎予防効果が期待できる歯磨き剤などさまざまな種類があります。
歯磨き剤は使った方がよいです
ただし市販の歯磨き剤は複数の薬剤が入っていることが多く、主な薬効成分の濃度は低いです。歯科医院専売品は成分の濃度が高く設定されています。歯科医院で私達に相談して下さい。
歯垢(プラーク)を落とすのはあくまで歯ブラシです。物理的にこすることで歯垢(プラーク)は落ちます。歯磨き剤はあくまでそれを手助けするもの。歯磨き剤を使わないからといって歯垢(プラーク)が落ちにくくなる・・・ということはありません。歯磨き剤をつけずに歯磨きしていて、ほぼ完璧に磨けている患者さんも実際にいらっしゃいますが、先ほど言いましたように、使った方が落ちもよく時間の短縮、虫歯・歯周病の予防にもなります。
歯磨き剤の中には。ステイン(着色汚れ)を除去して歯を白くする効果のものもあります。
そのため、歯磨き剤は使用した方が良いです。値段も数百円のものが多く、どこででも手に入りやすいです。そのため、患者さんに歯磨き剤を使うか使わないかどちらが良いか聞かれたとき、私は「使った方が良い」とお伝えしています。
正しい歯磨き剤の量
歯磨き剤を使う時に注意したいのがその量。
歯磨き剤をつけすぎると唾液が多く出て磨きづらかったり、実際は不十分なのにさっぱりして満足してしまうことがあります。先述のとおり、歯垢(プラーク)を落とすのは歯ブラシで、歯磨き剤はあくまで清掃効果を手助けするもの。歯ブラシでこするのが不十分では、歯垢(プラーク)が残ってしまいます。
そのため、正しい歯磨き剤の量は0.5~1cm程度(1g)とされています。歯ブラシの毛の部分の半分くらいの量で十分です。つけすぎないようにしましょう。ただ歯磨き剤によっては歯ブラシの毛先いっぱい(2cm位)につけないと薬効成分の効果が発揮できないものもあります。
電動歯ブラシのとき歯磨き剤の量は?
電動歯ブラシを使うときは、歯磨き剤は少量に留め、以下のことに気をつけましょう。
先述のとおり、歯磨き剤には研磨剤が含まれているものもあります。手で磨く分にはさほど問題ありませんが、電動歯ブラシの時は話が別。電動歯ブラシにより強い清掃性・振動が歯に加わります。その時に研磨剤が含まれた歯磨き剤をつけていると、歯の表面を傷つけたり知覚過敏の原因となります。
そのため電動歯ブラシを使うときは、歯磨き剤は少量に留めておき、歯の面に強く当てすぎないよう注意しましょう。あるいは研磨剤が含まれていない歯磨き剤を使用するようにしましょう。
電動歯ブラシ専用のものやジェル等はおすすめです。あとよく泡立つ発泡剤も少なめか入っていないものをおすすめします。
歯磨き剤の選び方に関するQ&A
歯磨き剤の選び方のポイントは、自身のニーズに合った種類を選ぶことやフッ素濃度、効果、値段などを考慮することです。
歯磨き剤の効果には虫歯予防、歯周病予防、ステインの除去、口臭予防、歯垢のつきにくくするなどがあります。
歯磨き剤にはステイン(着色汚れ)を除去して歯を白くする効果があるものもあります。
監修
歯科衛生士 坂上明美
医療法人真摯会
クローバー歯科クリニック
まつもと歯科
【所属学会】
日本歯周病学会
日本審美歯科学会
日本医療機器学会
日本アンチエイジング歯科学会
【資格】
スイスデンタルアカデミーエキスパート
第2種滅菌管理士
ホワイトニングコーディネーター
デンタルコーディネーター