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根管治療のメリットとデメリット、リスクについて

根管治療のメリットとデメリット、リスクについて

根管治療とは、虫歯や怪我によって歯の内部の神経や血管(歯髄)が感染した場合の治療法です。歯髄を取り除き、歯の内部を清掃・消毒して密閉することで、抜歯をせずに歯を残すことを目的としています。根管治療のメリットとデメリット、リスクについてご説明します。

根管治療のメリット

根管治療には多くのメリットがあります。

1. 歯を抜かずに保存できる

歯を抜くことなく、自分の歯を残すことができます。これは噛む力や見た目の自然さを保つために重要です。

歯を抜かずに保存することは患者さんの長期的な健康にとって大切なことです。抜歯を避けることで、周囲の歯にかかる負担を減らし、歯並びが乱れるのを予防することができます。また、自分の歯を残すことで、入れ歯やインプラントに比べてより自然な感覚で生活することができます。

2. 痛みを軽減する

感染や炎症による痛みが解消され、今まで悩んでいた症状がなくなりますので、患者さんの日常生活の質が向上します。

根管治療を受けることで、炎症が原因のズキズキとした痛みや噛む際の鋭い痛みを和らげることができます。また、患部で噛むことが難しかった状態から、しっかりと噛めるように機能を回復させることが出来ます。

この治療は特に感染が進行している場合に有効であり、痛みが治療直後から大幅に軽減するケースが多いです。

3. 費用の節約

根幹治療後は被せ物をします。被せ物の材質によって治療費は変わりますが、抜歯後にインプラントやブリッジを行う場合に比べて、治療費が安価になることがあります。

歯を保存することで、将来的な補綴治療(インプラント、ブリッジ、部分入れ歯など)にかかる費用を抑えることができます。また、長期的なメンテナンスの手間やコストも軽減できます。

4. 長期的な安定性

適切な治療を受け、定期的な健診を受けることで、歯を長期間維持することが可能です。

根管治療が成功すると、その歯は適切なケア次第で一生使用することができます。これは特に前歯など審美性が重要な部位において大きなメリットとなります。

根管治療のデメリット

一方で、根管治療にはいくつかのデメリットも存在します。

1. 治療期間が長い

根管治療は1回で終わらないことが多く、数回の通院が必要です。これは治療の複雑さによるものです。

各回の治療には時間がかかるため、忙しい患者さんにとってはスケジュール調整が困難になることがあります。特に感染が広範囲に及んでいる場合、治療期間がさらに長くなることがあります。

2. 完全な成功が保証されない

根管治療を行った後でも、再感染が起こる可能性があります。その場合、再治療や抜歯が必要になることもあります。

歯根の形状が複雑な場合や、治療が不十分だった場合、細菌が再び増殖し、炎症や痛みが再発することがあります。このようなケースでは追加の治療が必要となり、患者さんの負担が増す可能性があります。

3. 費用が高額になる場合がある

専門的な技術を要するため、費用がかさむ場合があります。特に被せ物を装着する場合は、さらに費用が発生します。

高額な治療費によって患者さんの経済的負担が増す可能性があります。特に健康保険が適用されない部分については、注意が必要です。

マイクロスコープを使用しての根幹治療は自由診療になる場合があります。

4. 歯が弱くなる

歯髄を除去することで歯が脆くなるため、被せ物や詰め物での補強が必要になります。

歯の強度が低下するため、治療後は硬いものを噛むことや強い力がかかる行為を避ける必要があります。この点で、患者さんの日常生活に一定の制限が生じることがあります。

根管治療のリスク

根管治療には以下のようなリスクが伴います。

1. 再感染のリスク

消毒や密閉が不十分だと、再度感染する可能性があります。この場合、再治療や外科的処置が必要になることがあります。

特に治療後のメンテナンスが不十分な場合や、歯磨きがうまく出来なくてお口の中が不衛生な状態になっている場合は、再感染のリスクが高まります。患者さんには適切なケアを徹底することが求められます。

2. 治療中の痛みや不快感

麻酔が効かない場合や治療後に一時的な痛みが生じることがあります。

一部の患者さんでは麻酔が十分に効かず、治療中に不快感を感じることがあります。また、治療後に軽い腫れや違和感が数日間続くこともあります。

3. 歯根破折のリスク

治療後には歯が脆くなってしまうため、強い力が加わった際に歯根が割れることがあります。

歯根破折は患者さんの噛み癖や日常生活の習慣によっても影響を受けます。特に歯ぎしりや食いしばりの癖がある方は注意が必要です。このリスクを軽減するためには、歯科医師の指導に従うことが重要です。

4. 合併症の可能性

治療中に器具が折れる、または歯根の外に薬剤が漏れるなどのリスクも考えられます。

合併症が発生した場合、追加の外科的処置が必要になることがあり、治療期間がさらに延びる可能性があります。

根管治療のプロセスと注意点

根管治療は以下の手順で進められます。

1. 診断と計画

  • レントゲン検査を行い、感染の程度や歯の状態を確認します。
  • 初診時には患者さんの口腔全体の状態を把握し、治療計画を立てることが重要です。

2. 感染歯髄の除去

  • 麻酔をした後、歯の内部の感染した歯髄を除去します。
  • 患部の徹底的な除去と清掃を行い、炎症の原因となる細菌を完全に取り除きます。

3. 清掃と消毒

  • 特殊な器具を使って歯根の内部を清掃し、細菌を除去します。
  • 消毒は治療の成功率を大きく左右する重要なステップです。特に細菌の除去が不十分だと再感染のリスクが高まります。

4. 密閉

  • 歯根の内部を消毒した後、ガッタパーチャという材料で密閉します。
  • 密閉には細菌の侵入を防ぐ役割があり、治療の持続性を確保するために欠かせない工程です。

5. 修復

  • 被せ物や詰め物を用いて歯を補強し、機能と見た目を回復します。
  • このステップでは審美性も考慮されるため、自然な見た目を追求した材料が使用されることが一般的です。

根管治療後のケア

根管治療が成功しても、適切なアフターケアが必要です。まず、治療が完了した歯を長期間健康に保つために、定期的な健診が欠かせません。歯科医師による健診では、治療後の歯の状態を確認し、問題が発生した場合には早期に対処することが可能です。また、再感染を防ぐためには丁寧な歯磨きが重要です。フッ素入りの歯磨き粉を用い、デンタルフロスを併用することで歯垢の蓄積を防ぎ、口腔内を清潔に保つことが推奨されます。

さらに、日常生活の中で歯に負担をかけないよう配慮することも大切です。特に硬いものや粘着性のある食べ物を避けることで、治療した歯への負担を軽減することができます。加えて、バランスの取れた食事を心がけ、適度な水分摂取を行うことで、歯や口腔全体の健康を維持することが可能です。これらのケアを徹底することで、治療の成功を長期的に維持し、再感染やトラブルを防ぐことができます。

定期的な健診

  • 再感染やトラブルを防ぐため、歯科医師の指示に従い、定期的に健診を受けましょう。
  • 健診では治療後の歯の状態を確認し、問題があれば早期に対応することができます。

適切な歯磨き

  • 歯垢を除去し、歯の健康を維持するために丁寧な歯磨きを心掛けてください。
  • フッ素入りの歯磨き粉を使用することや、デンタルフロスを併用することが推奨されます。

食生活の注意

  • 硬いものや粘着性のある食べ物は避けることで、歯への負担を軽減します。
  • バランスの取れた食事と適度な水分摂取も歯の健康維持に役立ちます。

まとめ

根管治療は、抜歯を避けて天然歯を保存するための重要な治療法です。その結果、患者さんは自然な噛み心地や見た目を保つことができます。ただし、治療にはメリットとデメリットがあり、リスクも伴います。根管治療を検討する際には、信頼できる歯科医院を選び、治療内容や費用についてしっかり理解することが大切です。

根管治療は決して簡単な治療ではありませんが、適切な処置を受けることで患者さんの口腔健康を大きく向上させる可能性があります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

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