親知らずが正しい位置にまっすぐに生えて来ない場合、痛みや感染、歯並びの乱れなど、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。親知らずが引き起こす可能性のあるリスクや、その対策についてご説明します。
親知らずとは?
親知らずとは、通常18歳から25歳の間に生えてくる最後の永久歯で、第三大臼歯とも呼ばれます。親知らずは、歯列の一番奥側に生えて来て、上下左右の計4本あります。
しかし現代人は親知らずが生えない人や、斜めや水平に生えてくる人が多く、親知らずの生え方に問題が出た場合は抜歯になるケースがほとんどです。
親知らずの問題が起こる理由
親知らず(第三大臼歯)は、現代人の顎が進化により小さくなってきていることから、多くの問題を引き起こすことがあります。これらの問題が発生する主な理由についてご説明します。
1. 顎のスペース不足
親知らずの問題の最も一般的な原因は、顎のスペース不足です。進化の過程で、人間の顎は小さくなり、親知らずが正しく生えるための十分なスペースがなくなってきました。このため、親知らずが斜めに生えたり、部分的にしか生えなかったり、完全に歯茎に埋もれたままになったりすることが多いです。
- 斜めに生える・・親知らずが正しい方向に生えるスペースがない場合、斜めに生えてきて、隣接する歯を押すことがあります。
- 部分的に生える・・親知らずが部分的にしか生えないと、歯茎に覆われた部分が炎症を起こしやすくなります。
- 完全に埋まっている・・顎の骨の中に完全に埋まってしまうこともあり、これが周囲の歯や骨に圧力をかけ、痛みや感染の原因となることがあります。
2. 異常な生え方
親知らずが正常に生えない場合、さまざまな問題を引き起こします。異常な生え方には以下のようなものがあります。
- 横向きに生える・・水平に倒れた状態で横向きに生えることで、隣の歯を下から押し、歯並びが乱れる原因となります。
- 奥歯の後ろに向かって斜めに生える・・親知らずが奥歯の後ろに向かって生えると、ブラッシングが困難になり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
- 前歯に向かって斜めに生える・・前歯に向かって生えることで、歯並びに影響を与え、歯並びが崩れる原因となります。
3. 部分的な露出
親知らずが歯茎の上に部分的にしか出ていない場合、歯茎の一部が覆われたままになります。この状態では、食べ物の残りや細菌が溜まりやすく、感染や炎症のリスクが高まります。この部分的な露出による問題は、以下のような症状を引き起こします。
- 歯茎の炎症・・親知らずが部分的に生えていると歯茎が炎症を起こし、痛みや腫れが発生します。
- 感染・・部分的に出ている部分や歯茎がめくれている部分に細菌が溜まりやすく、感染が進行することで膿が溜まり、口臭や痛みが発生します。
4. 清掃の難しさ
親知らずは第二大臼歯の更に奥に位置しているため、どうしても歯ブラシの毛先が届きにくく、歯磨きで汚れをきれいに落とすのが難しくなります。歯ブラシやフロスが届きにくいため、歯垢や歯石がたまりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
- 位置が深い・・親知らずが口の奥深くに位置しているため、ブラシの毛先が届きにくいです。
- 歯並びの影響・・親知らずが斜めに生えている場合や他の歯を押し出している場合、歯磨きがさらに困難になります。
5. 遺伝的要因
親知らずの問題は遺伝的要因も関与しています。親や祖父母が親知らずの問題を抱えていた場合、その子供や孫も同様の問題を経験する可能性が高くなります。これは、顎の大きさや形状、歯の生え方などが遺伝によって影響を受けるためです。
親知らずの問題を防ぐための対策
親知らずの問題を防ぐためには、以下の対策が有効です:
- 定期的な歯科健診・・親知らずの萌出状況を定期的にチェックし、問題が発生する前に早期に対処することが重要です。
- 適切な口腔ケア・・親知らず周囲の歯茎を清潔に保つために、丁寧な歯磨きとデンタルフロスの使用が推奨されます。
- 早期の抜歯・・問題を引き起こす可能性が高い場合、早期に親知らずを抜歯することで、リスクを回避することができます。
以上の情報を基に、親知らずの問題を理解し、適切な対応を取ることが重要です。歯科医師と相談し、最適なケアを受けることで、親知らずによるトラブルを未然に防ぐことができます。
抜いた方がいい親知らずとは?
以下のような問題が起こった場合は、親知らずの抜歯が推奨されます。
1. 智歯周囲炎(ちししゅういえん)
親知らずの周囲の歯茎が炎症を起こしている状態。
2.痛みや、腫れがある
親知らずが歯茎の上に部分的にしか生えてこない場合、歯磨きがしにくいために汚れがたまり、虫歯や歯周病を起こすことがあります。
3.歯並びが悪くなる
親知らずが手前の歯を押している場合、歯並びが悪くなることがあります。
4.手前の歯が虫歯になる
親知らずが斜めに生えている場合、歯磨きのしにくい隙間が出来てしまい、虫歯になりやすくなります。また、手前の歯の根が親知らずに押されることで、歯の根が溶けることがあります。
5.顎関節症になりやすい
親知らずが異常な生え方をすると、歯並びや噛み合わせが悪くなることがあります。噛み合わせが悪いと顎の関節に負担がかかり、顎関節が痛い、口が開けにくいなどの顎関節症の症状があらわれる事があります。
親知らずを放置するリスク
1. 痛みと不快感
親知らずが正常に生えない場合、痛みや不快感を引き起こすことが多いです。特に、歯茎に半分埋もれた状態や、斜めに生えた状態では、周囲の歯や歯茎に圧力をかけ、痛みが続くことがあります。
- 部分的に生えた場合・・親知らずが部分的にしか生えてこないと、歯茎に覆われている部分が炎症を起こしやすくなります。
- 斜めに生えた場合・・親知らずが斜めに生えることで、隣接する歯に圧力をかけ、持続的な痛みや違和感を引き起こします。
- 完全に埋もれている場合・・完全に埋もれている親知らずが、骨や他の歯に圧力をかけることで、深部の痛みを引き起こすことがあります。
2. 感染と炎症
親知らずが部分的にしか生えていない場合、周囲の歯茎に食べ物のカスや細菌が溜まり、感染が起こりやすくなります。感染が進行すると、以下のような症状が現れます。
- 歯茎の腫れ・・親知らず周囲の歯茎が赤く腫れ、触ると痛みを感じることがあります。
- 膿の排出・・感染が進行すると、膿が形成され、口腔内に排出されることがあります。これにより、口臭が強くなることがあります。
- 熱感・・感染部位に熱感を感じることがあり、場合によっては軽度の発熱を伴うこともあります。
3. 歯並びへの影響
親知らずが生えてくることで、親知らずが他の歯を押して歯並びが乱れることがあります。
- 前歯の歯並びが乱れる・・親知らずが後ろから圧力をかけることで、前歯が押し出され、歯並びが崩れることがあります。
- 矯正治療後の再度の乱れ・・矯正治療を受けた後の人にとって、親知らずの影響で再度歯並びが乱れることは大きな問題です。これにより、再度矯正治療が必要になる場合があります。
4. 虫歯と歯周病のリスク増加
親知らずがきちんと歯磨き出来ていない場合、虫歯や歯周病のリスクが高まります。親知らずは口の奥に位置しているため、歯ブラシが届きにくく、歯垢や歯石が蓄積しやすいです。その結果、以下のような問題が生じることがあります。
- 虫歯・・親知らずやその周囲の歯が虫歯になるリスクが高まります。特に、親知らずが生えかけている場合、その周囲の歯に影響が及びやすいです。
- 歯周病・・親知らず周囲の歯茎が炎症を起こし、歯周病が進行することがあります。これにより、歯茎の後退や歯の動揺が生じる可能性があります。
5. 嚢胞や腫瘍の形成
親知らずが完全に埋もれている場合、その周囲に嚢胞や腫瘍が形成されるリスクがあります。嚢胞や腫瘍は、以下のような問題を引き起こすことがあります。
- 骨の破壊・・嚢胞が大きくなることで、顎骨を破壊し、骨折のリスクが高まります。
- 他の歯への影響・・嚢胞や腫瘍が隣接する歯に影響を与え、これらの歯の健康を損なうことがあります。
親知らずのリスクに対する対策
親知らずによるリスクを最小限に抑えるためには、以下の対策が有効です。
- 定期的な歯科健診・・親知らずの状態を定期的にチェックし、問題が発生する前に適切に対処することが重要です。
- 丁寧な歯磨き・・親知らず周囲の歯茎を清潔に保つために、丁寧に歯磨きを行い、デンタルフロスも併用してケアを行いましょう。
- 早期の抜歯・・問題を引き起こす可能性が高い場合、早期に親知らずを抜歯することで、リスクを回避することができます。
まとめ
親知らずはまっすぐに生えてくることが少なく、問題を起こしやすい歯です。親知らずに問題がある場合、それを放置することは、多くのリスクを伴います。
痛みや感染、歯並びの乱れ、虫歯や歯周病のリスクが増加するだけでなく、顎骨の破壊や嚢胞、腫瘍の形成など深刻な問題が起こることもあります。これらのリスクを避けるためには、定期的な歯科健診と適切な口腔ケアが欠かせません。
親知らずが問題を引き起こしている場合や将来的に問題を引き起こす可能性が高い場合は、歯科医師と相談しながら、適切な対策によってリスクを最小限に抑えるようにしましょう。