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インプラント周囲炎の予防と対策

インプラント周囲炎の予防と対策

インプラントは天然歯とは構造が異なるため、一度炎症が進行すると治療が難しくなることもあります。そのため、日頃のケアや定期的な健診が欠かせません。インプラント周囲炎を予防し、健康な口腔環境を維持するための具体的な対策についてご説明します。

インプラント周囲炎とは?その原因を知ろう

インプラント治療を受けた患者さんの中には、「インプラントは人工の歯だから虫歯にならないし、特にケアをしなくても大丈夫」と思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実はインプラントにも「インプラント周囲炎」という歯周病のような炎症が起こる可能性があり、インプラントがダメになる場合の1番の原因とされています。

インプラント周囲炎の主な原因

歯垢や細菌の蓄積

  • 天然歯と同じように、インプラント周囲にも歯垢が付着します。
  • 適切な歯磨きができていないと、細菌が増殖し炎症を引き起こします。

噛み合わせの問題

  • インプラントは天然歯よりも感覚が鈍いため、噛み合わせのバランスが崩れやすいです。
  • 過剰な負担がかかることで、歯茎に炎症が生じやすくなります。

喫煙や糖尿病などの生活習慣

  • 喫煙は血流を悪化させ、歯茎の回復を妨げます。
  • 糖尿病があると、免疫力が低下し感染リスクが高まります。

インプラント周囲炎は、放置すると最悪の場合インプラントを失うことにもなりかねません。 そのため、正しいケアと予防が重要なのです。

インプラントの周囲が炎症を起こしやすい理由

インプラントは天然歯とは異なり、周囲の組織にいくつかの特徴があるため、炎症が発生しやすいとされています。以下のポイントを理解し、適切なケアを行うことが大切です。

1. インプラントには歯根膜がない

天然歯には「歯根膜」というクッションの役割をする組織があります。歯根膜は血管や神経を含んでおり、細菌に対する防御機能も備えています。しかし、インプラントにはこの歯根膜が存在しないため、細菌の侵入を防ぎにくく、炎症が広がりやすいのです。

2. 歯茎との結びつきが天然歯と異なる

天然歯は歯槽骨(あごの骨)と強固に結びついていますが、インプラントは骨と直接結合しているため、周囲の歯茎の防御力が弱まります。そのため、細菌が侵入しやすく、歯茎の炎症が進行しやすいのです。

3. インプラントの表面が細菌の付着を招く

インプラントの素材はチタンが主流ですが、表面の微細な凹凸が細菌の温床になりやすいと言われています。そのため、天然歯よりも細菌が付着しやすく、歯垢がたまりやすいため、炎症が起こりやすくなります。

4. 感覚が鈍いため異変に気づきにくい

天然歯には神経があるため、違和感や痛みを感じやすいですが、インプラントには神経がないため、炎症が進行しても気づきにくいのです。その結果、自覚症状が出たときにはすでに重症化していることが多いという特徴があります。

5. 免疫力の影響を受けやすい

インプラント周囲の組織は、患者さんの健康状態によって炎症を起こしやすくなります。特に、糖尿病や喫煙習慣のある方は、歯茎の血流が悪くなり、感染リスクが高まるため注意が必要です。

これらの要因により、インプラント周囲は炎症を起こしやすい環境にあります。適切なケアを怠ると、インプラント周囲炎が進行しやすくなるため、日常的な管理が重要です。

インプラント周囲炎を防ぐために日常生活でできること

インプラント周囲炎を防ぐためには、毎日のケアがとても大切です。以下のポイントを意識して、しっかりと予防しましょう。

毎日行うべき予防策

正しい歯磨きの習慣を身につける

  • インプラントの周囲は天然歯と異なるため、専用のケアが必要です。
  • 柔らかめの歯ブラシを使い、歯茎を傷つけないように優しく磨きましょう。
  • 磨き残しを防ぐために、1本ずつ丁寧に磨くことを意識しましょう。

抗菌性のある洗口液を使用する

  • 殺菌作用のある洗口液を併用することで、細菌の増殖を抑えることができます。
  • 特に歯科医師が推奨するものを使用すると効果的です。
  • 使用後のうがいもしっかり行い、成分を十分に活用できるようにしましょう。

食生活に気をつける

  • バランスの良い食事を心がけ、歯茎の健康を保つ栄養素(ビタミンC・カルシウム)を積極的に摂取しましょう。
  • 糖分の多い食べ物は細菌の温床になりやすいため、摂取量を抑えることが望ましいです。
  • 噛む習慣を意識し、よく噛むことで唾液の分泌を促し、口内環境を整えることができます。

これらの習慣を続けることで、インプラント周囲炎のリスクを大幅に低減できます。

定期的な健診の重要性とその内容

インプラントを長持ちさせるためには、定期的な健診が欠かせません。 健診を怠ると、知らないうちにインプラント周囲炎が進行してしまうこともあります。

歯科医院での定期健診の内容

インプラント周囲の歯垢や歯石の除去

  • 歯科医院では、専用の器具を使ってインプラント周囲の汚れを徹底的に除去します。

噛み合わせのチェック

  • インプラントに過剰な負担がかかっていないか確認し、必要に応じて調整を行います。

歯茎の健康状態をチェック

  • インプラント周囲の歯茎に炎症がないか、専門的に診断します。

定期的なメンテナンスを受けることで、インプラントを健康な状態で長く維持できます。

インプラント周囲炎の初期症状を見逃さないために

インプラント周囲炎は、初期段階で適切な対応をすれば進行を防ぐことができます。 しかし、初期症状はなかなか自分自身で気づくことが出来ません。そのため、セルフチェックに加えて歯科医院でのメンテナンスが重要になります。

注意すべき症状

  • 歯茎の腫れや赤みがある
  • 出血しやすくなる
  • 口臭が強くなる
  • インプラント周囲の違和感や軽い痛み

これらの症状を感じたら、すぐに歯科医院を受診しましょう。

初期症状を見逃さないためのポイント

毎日のセルフチェックを行う

  • 歯茎の色や腫れ、出血の有無を鏡で確認しましょう。
  • インプラントの周囲を指で軽く触れて、違和感がないか確かめることも大切です。

定期的な歯科健診を受ける

  • 歯科医師によるチェックで、目に見えない炎症も早期発見できます。
  • 健診時には、インプラント周囲の清掃方法の指導を受けることも推奨されます。

口腔ケアを徹底する

  • インプラント周囲は歯垢がたまりやすいため、適切な歯磨きが重要です。
  • デンタルフロスや歯間ブラシを使い、細かい部分の汚れも取り除きましょう。

これらの対策を日常生活に取り入れることで、インプラント周囲炎の初期症状を見逃さず、早期に対応することが可能になります。

インプラント周囲炎になってしまった場合の対処

もしインプラント周囲炎になってしまった場合でも、早めの対処で進行を防ぐことが可能です。

治療方法

歯科医院での専門的なクリーニング

  • 歯科医師による徹底的な清掃で、炎症の原因となる歯垢を除去します。

抗菌薬の使用

  • 炎症が進行している場合、抗菌薬を使用して細菌の増殖を抑えます。

外科的治療が必要な場合もある

  • 重症化すると、手術による対応が必要になることがあります。

インプラント周囲炎は放置すると深刻なトラブルにつながるため、早めの対策が重要です。

まとめ

インプラントの周囲の歯茎は感染に弱いため、周囲炎への対策がとても重要になります。インプラント周囲炎を防ぐためには、以下の点を意識しましょう。

  • 毎日の適切なケアを徹底する
  • 定期的な歯科医院でのメンテナンスを受ける
  • 生活習慣を見直し、歯茎の健康を維持する

インプラントは適切なケアを続ければ、かなり長く維持することが出来ます。周囲炎に気を付けて、健康な口腔環境を守りましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

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