
インビザラインやその他の矯正治療にはリスクが伴い、稀に失敗やトラブルが起きることがあります。その原因は、患者さんの状態や治療計画の不備、治療後のケア不足など様々です。インビザラインなどの矯正治療で起こり得る失敗例やそれを防ぐ方法についてご説明します。
インビザラインなど歯列矯正の失敗例

全ての人にとって完璧な治療というものは存在しないことを前提に、お話していきます。
インビザラインなどの歯列矯正で、かえって口の中に問題が起きてしまうこともあります。歯科医師のせいだ!と思われがちですが、もともと難しい歯並びであったり、歯科医師と上手くコミュニケーションを取れていなかったり、原因はさまざまです。
インビザラインなどの歯列矯正での失敗例をいくつかご紹介します。
- 歯が計画通りに動かない
- 咬み合わせが悪くなった
- 歯並びが元に戻った(後戻り)
- 歯肉や顎骨がダメージを受けた
- 虫歯や歯周病の進行
- 正中(口の中心)が合わない
- 顎関節症になった
1. 歯が計画通りに動かない
具体例
インビザラインの装着時間が1日20時間以上必要なところ、患者さんが仕事や学校で外したまま数時間過ごしてしまう。
マウスピースが適切にフィットしておらず、矯正力が十分に伝わらない。
影響
歯が予定より動かず、治療計画全体が遅れる。場合によっては、アライナーの再作成(リファインメント)が必要となり、費用や期間が増加する。
対策
マウスピース装着の重要性を患者さんに再三強調し、装着時間をアプリやタイマーで管理する習慣をつける。装置がしっかりフィットしていない場合は、早めに矯正医に相談し調整を受ける。
2. 咬み合わせが悪くなった
具体例
奥歯では噛めているのに前歯は噛んでいない、というように、噛み合わせが悪くなってしまうことがあります。歯列矯正の主な目的の一つは、正しい噛み合わせを実現することですが、治療が不十分だと噛み合わせの問題が残ることがあります。たとえば、治療中に奥歯の噛み合わせが適切に調整されなかった場合、前歯だけが矯正されて見た目が良くなったとしても、全体の噛み合わせに不具合が生じることがあります。これにより、顎関節症や咀嚼(そしゃく)のトラブルを引き起こす可能性があります。
影響
食事の際に噛みにくさを感じるほか、顎関節に負担がかかることで顎関節症を引き起こすリスクがある。
対策
矯正医が定期健診で咬み合わせの変化を慎重に観察し、必要に応じてアタッチメント(歯に付ける小さな突起物)を追加する。
患者さん自身も咬み合わせに違和感を覚えたら、早めに医師に報告する。
3. 歯並びが元に戻った(後戻り)
具体例
インビザラインなど歯列矯正自体は上手くいき歯並びはきれいになっても、その後のケアによっては後戻りする(=また歯並びが悪くなる)可能性もあります。
矯正治療が終了しても、リテーナー(保定装置)を使用しない場合や、使用期間が短すぎると、歯が元の位置に戻ってしまう「後戻り」が発生することがあります。特に、成人の矯正では歯が元に戻りやすい傾向があるため、治療後のリテーナーの使用が非常に重要です。リテーナーの使用指示を守らない場合、せっかくの治療効果が失われる可能性があります。
影響
治療の成果が台無しになるだけでなく、再治療が必要になり費用や時間の負担が増える。
対策
リテーナーの装着指示を厳守する。最初の数か月は1日20時間以上装着し、その後も医師の指示に従って継続する。
定期的にリテーナーの状態をチェックし、破損や変形があれば早めに交換する。
4. 歯肉や顎骨がダメージを受けた
具体例
歯に過度な矯正力がかかると、歯肉が炎症を起こしたり、歯槽骨が吸収されることがある。歯磨きが十分でない場合、歯肉炎や歯周病が進行し、歯茎が下がる(歯肉退縮)。
影響
歯茎が下がると歯の見た目が悪くなり、場合によっては歯の安定性も損なわれる。さらに、治療中断を余儀なくされることもある。
対策
矯正治療中は歯磨きやフロスを徹底し、歯肉の健康を維持する。歯周病の兆候があれば早急に治療する。
5. 虫歯や歯周病の進行
具体例
ワイヤー矯正やブラケット矯正など、歯列矯正装置をつけていると歯磨きが難しくなります。そのため、装置の調整時には歯科衛生士などにクリーニングをしてもらえます。
しかしもともと虫歯になりやすい方などは、セルフケアが追いついていないと歯列矯正中に虫歯になってしまうことも。同様に歯列矯正中に歯周病になることも十分考えられます。歯列矯正装置をつける前や、つけてからも正しい歯磨き方法を習い、徹底することが重要です。
影響
矯正治療中の虫歯治療は難しく、治療が遅れることがある。また、歯周病が進むと矯正治療の中断も必要になる。
対策
矯正中は食後すぐに歯磨きを行い、フッ素入り歯磨き粉や洗口液を使用する。
定期的に歯科健診を受け、専門的なクリーニングを依頼する。
6. 正中(口の中心)が合わない
インビザラインなど歯並びを良くする歯列矯正は終了したのに、正中(口の中心)が合わない場合があります。このような正中のずれにより、前歯で食べ物を上手く噛み切れないことも。

7. 顎関節症になった
インビザラインなど歯列矯正により噛み合わせが不安定になると、顎に負担がかかりやすくなります。これが進行すると顎関節症になる場合も。これは顎の痛みや口の開けづらさ、肩こりなどにつながる可能性があります。
歯列矯正中または矯正後に、顎関節症(顎の痛みやクリック音など)が悪化する場合もあります。これは、噛み合わせや顎の位置が不適切なまま矯正が行われた場合に起こりやすいです。治療後に顎関節に異常が出ると、長期的な治療が必要になることがあります。
咀嚼筋や顎関節の障害によって、顎の関節や周囲の組織に生じるさまざまな疾患の総称。口を開閉するときに音がする、痛みがある、口を大きく開けられないなどの症状が現れる。頭痛・めまい・肩こり・耳の痛みなどを伴うこともある。
引用 コトバンク
そのほか歯列矯正で起こりうる問題

次はどの歯科医院で歯列矯正を行おうと起こりうる問題です。
- 歯茎が下がった・歯が揺れるようになった
- 歯石がつきやすくなった
- 過剰の歯の移動によるトラブル
- 審美的な問題が残った
1. 歯茎が下がる・歯が揺れる
歯列矯正は、歯やあごの骨に力を加えて動かしていくもの。むりに力をかけすぎるとあごの骨が吸収され、歯茎が下がったり歯が揺れたりする可能性があります。
歯茎が下がると歯が長く見えたり、歯の根元部分の隙間が目立つなど見た目上の問題が出てきます。この隙間のことをブラックトライアングルと呼びます。

ブラックトライアングルは前歯の歯と歯の間にできやすいです。
2. 歯石がつきやすくなる
歯列矯正により歯茎が下がると、歯の根元部分の隙間が目立つことがあります。これをブラックトライアングルを呼びます。このブラックトライアングルは、歯間ブラシやデンタルフロス(糸)などでしっかりセルフケアをしないと歯石がたまりやすいです。


実際、私もそうです。下の前歯にブラックトライアングルがいくつもあります笑 毎日歯ブラシだけでなく歯間ブラシ、デンタルフロス(糸)を使用していることで歯石はついていません。しかし少しでも油断するとすぐに歯石がついてしまいます。下の前歯は唾液腺があり、もともと歯石がつきやすい場所なので余計ですね。

ところで、歯石が付きやすい人と付きにくい人がいるのをご存じですか? 虫歯にもなりやすい人となりにくい人がいますよね。歯石が付きやすい人は、付きにくい人と比べると、唾液がアルカリ性に近い傾向があると言われています。逆に歯石が付きにくい人は、唾液が酸性に傾いており、虫歯になりやすいと言えるでしょう。
3. 過剰な歯の移動によるトラブル
過剰に歯を移動させることで、歯の根が吸収されてしまう「歯根吸収」が起こることがあります。歯根が短くなると、歯の寿命が短くなり、最終的には歯が抜けるリスクが高まります。特に、無理な力をかけて短期間で治療を進めようとすると、このようなリスクが高まるため、治療期間やペースのバランスが重要です。
4. 審美的な問題が残る
歯並びが一応改善されたとしても、理想的な見た目に達しない場合があります。例えば、歯の傾きや歯と歯の間に隙間が残るなど、審美的な不満が残ることがあります。特に、顔全体のバランスやスマイルラインを考慮した治療が行われなかった場合、患者さんが見た目に満足できないことがあります。
まとめ

インビザラインなどの矯正治療は、適切な計画と患者さんの協力によって成功する可能性が高いものです。しかし、治療中や治療後のケアを怠ったり、適切に装置を装着できていなかった場合は、失敗やトラブルが発生することもあります。
正中のズレや噛み合わせの不具合、顎関節症、治療後の後戻りなどを防ぐためには、歯科医院や歯科医師としっかり話し合い、疑問を解決し、納得した上で治療を進めていくことがとても重要です。