
インビザラインの治療中に、アライナーが浮いてしまうのは、治療の初期やアライナー交換直後に起こりやすい現象です。その原因には、装着時間不足や歯の移動の遅れなど、さまざまな要素が考えられます。アライナーが浮く原因とその対処法をご説明します。
インビザラインのアライナーが浮く状態とは?
インビザラインのアライナーが浮いているというのは、部位別に以下のような状態を指します。
前歯の先端部分
アライナーが前歯の先端に完全にフィットせず、目視でもわかるような隙間ができることがあります。指や爪で触れると、「カタカタ」とした感触があることが特徴です。
- 目視で確認できる隙間
前歯の先端部分でアライナーと歯の間に隙間があり、アライナーが浮いているのが肉眼で確認できます。この隙間は、光が透過することで強調されることが多く、患者さんにとって気になるポイントとなります。 - 触ると違和感がある
指や爪で触ると、浮いている部分が「カタカタ」と動く感触があることが多いです。この状態は、日常生活や会話中に不快感を引き起こすことがあります。 - 原因の詳細
この浮きは主に、前歯の移動が計画通りに進まない場合や、患者さんがアライナーを正しく装着していない場合に起こります。特に、前歯の歯根が長い場合や歯肉の状態に問題がある場合には、動きが遅れることが原因になります。
奥歯(臼歯)部分
奥歯においては、アライナーがしっかり沈み込まず、噛み合わせた際に浮いているように感じることがあります。この場合、アライナーが外れるような違和感を伴うこともあります。
- 噛み合わせ時の違和感
アライナーを装着していても、奥歯で噛み合わせがうまくいかないように感じることがあります。この場合、アライナーが噛む力を正しく伝えられず、治療が停滞することがあります。 - 装着時の見た目
鏡で確認すると、奥歯の部分でアライナーが浮いているのがわかることがあります。特に、下顎の奥歯は見えにくいため、気づきにくいことが多いですが、定期的な健診時に指摘されることがあります。 - 原因の詳細
奥歯は噛む力が最も集中する場所であるため、アライナーにかかるストレスが大きいことが一因です。また、奥歯が予定通りに動かない場合や、咬合(噛み合わせ)の問題がある場合にも浮きが生じます。
特定の歯周辺
治療中に特定の歯が予定通り動いていない場合、その歯周辺でアライナーがフィットしないことがあります。この状態では、部分的な隙間ができ、鏡で確認すると不自然なフィット感が見受けられます。
- 部分的な隙間
全体的にフィットしているように見えても、特定の歯の周りだけ浮いている場合があります。このような部分的な浮きは、早期に対応しないと治療全体に影響を及ぼす可能性があります。 - 動きが予定より遅れている歯
特に、移動量の多い歯や、矯正力が強く必要とされる歯では、動きが計画通りに進まずアライナーがフィットしない場合があります。 - 原因の詳細
この現象は、歯の形状が複雑であったり、歯根が動きにくい位置にあることが影響します。また、患者さんがアライナーを長時間装着していないことや、力を加えるアタッチメントが外れていることも原因となります。
新しいアライナー装着時
アライナーを交換した直後は、歯がまだ新しい位置に完全に移動していないため、フィット感に違和感を覚えることがあります。これは数日で解消することが多いですが、場合によっては継続して隙間が生じることもあります。
- 適応期間中の状態
新しいアライナーを装着して1~3日間は、歯がまだアライナーの形状に追いついていないため、浮きを感じることがあります。これは一時的なもので、多くの場合は時間の経過とともに解消します。 - 浮きが解消しない場合
もし3日以上経っても浮きが解消しない場合は、アライナーが計画通りに作用していない可能性があるため、歯科医院での確認が必要です。 - 原因の詳細
この現象は主に、新しいアライナーが計画通りの歯の位置に基づいて作成されているため、歯がその位置に達していない場合に発生します。また、交換前のアライナーの装着時間が短かった場合も要因となります。
歯列全体での浮き
稀に、アライナーが歯列全体で浮いていると感じるケースもあります。この状態は、計画通りに進行していない治療全体の問題を示していることが多いです。
- 全体的な違和感
歯全体にアライナーがしっかりフィットしていないため、違和感が広範囲に及びます。この場合、患者さん自身では原因を特定するのが難しい場合があります。 - 原因の詳細
アライナーの設計そのものに問題がある可能性もありますが、患者さんの装着時間不足や歯の動きが遅れていることが主な原因となります。
インビザラインのアライナーが浮く原因

インビザラインを始めたてであったりアライナーを交換したての頃は、アライナーが歯にフィットせず浮くように感じることがあります。
インビザラインのアライナーが浮いてしまう原因はさまざまですが、主な原因は以下の通りです。
1. 歯の移動が計画通りに進んでいない
アライナーが適切に歯にフィットするためには、歯が計画通りに動いている必要があります。歯の移動が遅れている場合、アライナーが浮くことがあります。
2. アタッチメントの適合不良
アタッチメント(アライナーの保持を助ける小さな突起)が適切に機能していないと、アライナーがしっかりとフィットせずに浮いてしまうことがあります。
アライナーには歯の動きを促進するための「アタッチメント」と呼ばれる突起物が装着されます。このアタッチメントが正しく接着されていなかったり、患者さんの咬み合わせが複雑だったりすると、アライナーがうまく密着しないことがあります。また、アライナーそのものが製造時にわずかに変形している場合もまれに見られます。
3. アライナーの装着時間不足
アライナーは1日22時間以上の装着が推奨されています。装着時間が不足していると、歯の移動が不十分になり、アライナーが浮く原因になります。
アライナーは、1日20~22時間の装着が推奨されています。この時間を守らないと、歯が予定通りに動かず、次のアライナーに進む際に浮きが発生することがあります。特に、学校や職場で取り外したまま長時間放置する習慣があると、浮きが顕著になる可能性があります。
4. アライナーの変形や破損
アライナーが高温にさらされたり、力をかけすぎて変形や破損した場合、歯に正しくフィットせず浮くことがあります。
アライナーは現在の歯よりも最大で0.25mm歯が動いた形になるように設計されています。そのため、新しいアライナーをはめた時に歯にきちんとはまらず、浮くように感じるのは珍しいことではありません。
注意しなければならないのは、次のアライナーへの交換が近くなってきてもまだ浮いていたり、あまりに歯にはまっていない、不安定という場合です。その場合は必ず歯医者に相談しましょう。治療計画通りに歯が動いていない可能性があります。
アライナーの取り外しの際、片側から力を入れすぎたり、爪を使って無理に外そうとすると、アライナーが曲がったり破損したりすることがあります。また、外出先などで適切に保管せず、汚れや傷がつくことも原因となります。
インビザラインのアライナーが浮くときの対処法4選

インビザラインが浮くときの対処法をいくつかご紹介します。
1. 装着時間を見直す
インビザラインの場合、アライナー装着時間は1日22時間以上です。マウスピース矯正ではアライナーの装着時間を確保することが重要です。忙しい生活の中でも、装着時間を守るために工夫を凝らし、装着時間を管理しましょう。
その他のマウスピース矯正の装着時間は、以下でまとめています。
これらの装着時間を守れていないと、歯が予定通り動かず、インビザラインが浮くようなことが起こります。特にインビザラインは装着時間が長いですが、守れば確実に歯並びは治ってきます。頑張りましょう。
2. アライナーチューイを噛む

チューイーと呼ばれるシリコン製の棒を噛むことで、アライナーを正しい位置にしっかりとフィットさせることができます。これを毎日数分間行うことで、アライナーの浮きを改善できます。
インビザラインを始めたてやアライナーを交換したての頃は、特にアライナーチューイが有効とされています。アライナーチューイを5分ほど噛んでから、インビザラインを歯にはめてみましょう。噛む前よりなじみやすくなるかもしれません。
3. 1つ前のアライナーに戻す
アライナーを交換したての時、インビザラインの浮くような感じがあるときは、1つ前のアライナーに戻ってみるのも手です。1つ前のアライナーをつけて2〜3日過ごすと、本来のアライナーがぴったりはまることも多いです。
早く効果を得たいからと無理に次へ進むと、かえって逆効果になることもあります。
4. 歯科医師に相談する
上記の方法どれを試してもインビザラインが浮くようであれば、すぐに歯科医に相談することが大切です。場合によってはアライナーの作り直しになることも。早めに歯科医師に相談しましょう。
浮きを防ぐための日常のケア
アライナーの浮きを防ぐためには、以下のケアが役立ちます。
食事や飲み物の際には必ず外す
熱や硬い食べ物がアライナーにダメージを与えることがありますので、必ず外すようにしましょう。
正しい装着方法を徹底する
アライナーを装着する際は、前歯から順に押し込み、しっかりと噛んでフィットさせることが重要です。
アライナーが浮くことは珍しいことではありませんが、適切な対処法を取ることで、治療の効果を最大限に引き出すことができます。気になる場合は、早めに歯科医に相談しましょう。
まとめ

インビザラインのアライナーが浮くことは珍しいことではありませんが、放置すると治療計画に影響を及ぼす可能性があります。装着時間の確保やアライナーチューイの活用、必要に応じた歯科医師への相談が大切です。
日々のケアを徹底しながら、早めの対処を心がけることで、インビザライン治療をより効果的に進めることができます。美しい歯並びを手に入れるために、計画的な対応を続けましょう。
監修

医療法人真摯会
クローバー歯科クリニック
まつもと歯科
歯列・歯並び・ 咬み合わせのお悩みなら。マウスピース、インビザライン、裏側、小児矯正等。LINE相談可。八重歯、出っ歯、受け口の治療など得意です。大阪梅田、なんば、心斎橋、吹田、豊中、神戸にクリニックがあります。