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インプラント・入れ歯

インプラントが周囲炎を起こしやすい理由とは?

インプラントが周囲炎を起こしやすい理由とは?

インプラントは、失った歯を補う治療法として多くの患者さんに選ばれています。しかし、天然歯とは異なる特徴を持つため、適切なケアを怠ると”インプラント周囲炎”というトラブルが発生しやすくなります。その理由についてご説明します。

インプラント周囲炎とは?

まず、インプラント周囲炎とは何かを理解することが大切です。

  • インプラント周囲粘膜炎 → 歯ぐきの炎症のみが発生している状態。
  • インプラント周囲炎 → 歯ぐきだけでなく、インプラントを支える骨まで炎症が進行している状態。

特にインプラント周囲炎は進行が早く、放置するとインプラントが脱落する可能性もあります。天然歯の歯周病と似た症状ですが、進行のスピードが速いのが特徴です。

インプラント周囲炎の症状

インプラント周囲炎は初期段階では自覚症状が少なく、気づかないうちに進行してしまうことがあります。症状が進行すると以下のような兆候が現れます。

歯ぐきの腫れや赤み

  • インプラント周囲の歯ぐきが赤く腫れ上がる。
  • 軽く押すと痛みや違和感を感じることがある。

出血や膿が出る

  • 歯磨きやフロス使用時に出血しやすくなる。
  • 進行すると膿が出ることがあり、口臭の原因にもなる。

インプラントのぐらつき

  • 周囲の骨が破壊されると、インプラントが動くようになる。
  • 放置すると最終的にインプラントが脱落する可能性がある。

噛むと痛みがある

  • かみ合わせ時に違和感や痛みを感じることがある。
  • 痛みが増す場合、炎症が深刻化している可能性が高い。

これらの症状を感じたら、早急に歯科医院を受診することが大切です。

インプラントが周囲炎を起こしやすい理由

では、なぜインプラントは周囲炎を起こしやすいのでしょうか?主な理由は以下の通りです。

1. 天然歯と異なり免疫機能が働きにくい

天然歯は歯根膜という組織に支えられています。歯根膜は以下の役割を果たします。

  • 外部からの細菌侵入を防ぐバリア機能。
  • 炎症を抑える免疫細胞の供給。
  • 圧力を感知し、噛み合わせの調整を行う。

しかし、インプラントには歯根膜が存在しないため、免疫機能が低くなり、細菌感染を起こしやすくなります。その結果、歯ぐきや骨の炎症が進行しやすくなります。

2. インプラント体と歯茎の間に歯垢が溜まりやすい

インプラントの表面は骨と結合しやすいようにザラザラした加工がされています。歯周ポケットが深くなるとインプラント体に歯垢がつきやすくなって、きれいに除去するのが難しくなります。

  • 表面の性質が天然歯と異なるため、歯垢がついて細菌が増殖しやすい。
  • 歯ぐきとの密着度が異なり、隙間に細菌が侵入しやすい。

そのため、適切な歯磨きを行わないと、短期間で細菌が繁殖し、炎症を引き起こしてしまいます。

3. インプラントの周囲組織が弱い

天然歯の周囲には強固な結合組織があり、細菌の侵入を防いでいます。しかし、インプラントの周囲組織は構造が異なり、以下のような違いがあります。

  • 天然歯と違い、結合組織の密度が低く、細菌が侵入しやすい。
  • 血流が少ないため、炎症が発生すると治りにくい。

このような要因により、細菌感染が進みやすく、周囲炎のリスクが高くなるのです。

4. 噛み合わせの負担がダイレクトに伝わる

インプラントは歯根膜がないため、噛み合わせの力が直接骨に伝わります。以下のような問題が生じることがあります。

  • 強い噛み締めや歯ぎしりにより、骨に過度な負担がかかる。
  • 微細な動きに対応できず、骨との結合が損傷する。
  • 被せ物の形状が合っていないと、特定の部位に力が集中する。

その結果、炎症を引き起こしやすくなるのです。

5. 定期的な健診を怠ると発見が遅れる

インプラントは虫歯にはなりませんが、その分「問題が起きにくい」と思いがちです。しかし、インプラント周囲炎は痛みが出にくく、気づいたときにはかなり進行していることが多いのです。

  • 痛みを感じにくいため、異常があっても放置されやすい。
  • 定期的な健診を受けないと、初期の異常を見逃しやすい。
  • 進行すると治療が困難になり、最悪の場合インプラントを撤去しなければならない。

したがって、定期的な健診と専門的なクリーニングが不可欠です。

インプラント周囲炎の治療法とは?

インプラント周囲炎を発症してしまった場合、早期に適切な治療を受けることが重要です。主な治療法は以下の通りです。

専門的なクリーニング

専門的なクリーニングとは、歯科医院で専用の器械を使ってのクリーニングを指します。歯周ポケット内のクリーニングも可能ですので、セルフケアでの歯磨きと比べると汚れの除去率が上がります。また、周囲炎の進行度の検査を行い、歯茎の状態を歯科衛生士が管理します。

  • 超音波スケーラーや特殊な器具を使用し、歯垢や歯石を除去します。
  • バイオフィルムの除去により、細菌の増殖を抑えます。

抗菌療法

  • 抗生物質の内服や、局所的な抗菌剤の塗布を行い、炎症を抑えます。
  • 殺菌効果の高い洗口液を使用し、口腔内環境を改善します。

レーザー治療

  • 炎症部位にレーザーを照射し、細菌を減少させる治療を行います。
  • 組織の修復を促進し、治癒を早めます。

外科的治療

  • 炎症が重度の場合、手術で感染した組織を除去する必要があります。
  • 骨の再生療法(GBR)を行い、失われた骨を補填することもあります。

これらの治療法を適切に組み合わせることで、インプラントをできるだけ長持ちさせることが可能になります。

インプラント周囲炎を防ぐためのポイント

インプラント周囲炎を予防するには、以下のポイントが重要です。

毎日の適切な歯磨き

  • インプラント専用の歯ブラシや歯間ブラシを使用する。
  • フロスや洗口液を活用し、歯垢の蓄積を防ぐ。

定期的な健診とメンテナンス

  • 少なくとも半年に1回は歯科医院でチェックを受ける。
  • 専門的なクリーニングで歯垢や歯石を除去する。

噛み合わせのチェック

  •  噛み合わせに違和感を感じたら、早めに調整を受ける。
  • 歯ぎしりや食いしばりがある場合、ナイトガードの使用を検討する。

生活習慣の改善

  • 喫煙はインプラント周囲炎のリスクを高めるため、可能であれば禁煙を。
  • バランスの取れた食生活を心がけ、免疫力を維持する。

これらを意識することで、インプラントを長く健康に保つことができます。

【動画】インプラント治療のリスク

まとめ

インプラントは便利な治療法ですが、天然歯とは異なる性質を持つため、周囲炎を起こしやすい特徴があります。

  • 免疫機能が低く、細菌に弱い。
  • 歯垢が溜まりやすく、清掃が難しい。
  • 噛み合わせの負担が骨に直接かかる。
  • 異常に気づきにくく、発見が遅れやすい。

しかし、適切なケアと定期的な健診を受けることで、インプラントを長持ちさせることが可能です。ご自身のインプラントを守るために、今日からケアを見直してみてはいかがでしょうか?

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医日本歯周病学会

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