前歯がほんの少し虫歯になった時には、削った後にレジン(歯科用プラスチック)を詰めて治療します。治療直後は歯に馴染んだ色で治療跡がわからないくらいにきれいですが、レジンは経年劣化を起こし、しばらくすると歯とレジンの境目やレジン全体が着色してくる場合があります。色がついて目立つようになったレジンをきれいにする方法についてご説明します。
レジンの詰め物の基本知識
レジンとは?
レジン(歯科用プラスチック)は、合成樹脂の一種で、歯科治療において広く使用されている材料です。特に虫歯治療や歯の修復に用いられることが多く、自然な見た目と保険適用で安価なため、前歯の詰め物として良く使われます。
レジンの詰め物のメリットとデメリット
レジンのメリット
- 隣の歯に馴染んだ自然な色
- 保険適用なので治療費が安い
- 短時間での施術が可能
- 治療直後はつぎはぎ部分がわかりにくい
- 再治療が簡単に行える
レジンのデメリット
- 長期間使用すると変色しやすい
- 強度がやや弱い
- 歯垢が付きやすい
- 定期的なメンテナンスが必要
レジンの詰め物はどうして変色しやすいの?
1. 紫外線や酸化による経年劣化
前歯に使用したレジンの境目部分が目立ってしまう理由の1つは、経年劣化があげられます。紫外線があたるとレジンの構造が変化したり、酸化によって変色が起こることがあります。
2. 吸水性
レジンには吸水性があります。カレーや赤ワイン、コーヒー、紅茶などの色素が濃い食べ物を摂取すると、吸水性によりレジンに浸透して色がついてしまいます。ただし浸透量はレジンの種類や劣化状態によって異なるようです。
このようなレジンの経年劣化によって、前歯のつぎはぎ部分が目立ってきます。
レジンの詰め物が変色しやすくなる要因
レジン(歯科用プラスチック)が変色しやすくなる要因には様々なものがあります。
1. 食べ物や飲み物
色素の濃い飲食物
コーヒー、紅茶、赤ワイン、カレー、ベリー類など、色素が強い飲食物は、レジンに色素が浸透しやすく、変色を引き起こします。これらの食品を頻繁に摂取すると、レジンの表面に色素が蓄積し、徐々に変色が進みます。
酸性食品
酸性の強い食品や飲み物(例えば炭酸飲料、柑橘類)は、レジンの表面を荒らし、色素がより浸透しやすくなる原因となります。
2. 喫煙
タバコの煙には多数の有害物質が含まれており、その中でもタールやニコチンはレジン詰め物を変色させる要因となります。喫煙は血流を悪くして免疫力を低下させるなど、お口全体の健康にも悪影響を及ぼすため、禁煙が推奨されます。
タバコの煙に含まれるタールやニコチンは、レジンにとって強力な染料となり、変色の大きな原因となります。これらの化学物質は、レジンの表面に付着し、色を変えるだけでなく、歯全体の健康にも悪影響を与えます。
口腔内の衛生状態
適切な歯磨きが行われていない場合、食べ物の残りかすやプラークがレジンの表面に蓄積し、変色を引き起こします。特に、色素が強い食品を摂取した後にすぐに歯を磨かないと、変色が進行しやすくなります。
3. 加齢
年齢を重ねるとともに、レジン詰め物も徐々に劣化していきます。レジンの表面がすり減ることで、色素が染み込みやすくなり、変色が進みます。
レジン自体は、使用や経年によって摩耗し、表面が粗くなることで色素が付着しやすくなります。加齢に伴う唾液の減少も、レジンの変色を促進する要因となります。
紫外線や化学的要因
紫外線や酸化作用により、レジンに黄ばみや変色を引き起こすことがあります。これらの影響は、特に直射日光に頻繁にさらされる状況や、特定の化学薬品に接触することで起こります。
歯科治療の品質と技術
使用されるレジンの品質や、詰め物を行う際の技術も変色に影響します。質の低いレジンや不適切な処置によって早期に変色を引き起こす可能性があります。
変色を防ぐための予防策
レジンの変色を防ぐためには、以下のような対策が有効です。
正しい歯磨きの習慣
食後にすぐに歯を磨き、食品の色素がレジンに浸透する前に除去することが重要です。
毎日の歯磨きは、変色を防ぐための基本です。特に、色素が濃い食品や飲み物を摂取した後は、できるだけ早くブラッシングを行いましょう。フッ素入りの歯磨き粉を使用することで、歯の表面を保護し、変色を防ぐ効果が期待できます。
定期的な歯科健診
定期的に歯科健診とクリーニングを受け、レジンの状態をチェックしてもらいましょう。歯のクリーニングである程度の着色汚れは落ちます。
禁煙の重要性
喫煙は変色の大きな原因となるため、禁煙が強く推奨されます。禁煙することで、レジン詰め物だけでなく、全体の口腔健康が向上します。
食事や飲み物の選び方
色素が濃い食品や飲み物は変色の原因となります。これらを避けるか、摂取後に口をすすぐ習慣をつけることが重要です。また、ストローを使って飲み物を飲むことで、飲み物とレジンとの直接的な接触を避けることも効果的です。
レジンの変色は避けられない部分もありますが、適切なケアと生活習慣の見直しにより、その進行を遅らせ、美しい状態を保つことが可能です。
変色した場合の対処法
セルフケアで気をつけること
変色が軽度の場合、ホワイトニング用の歯磨き粉を使用することで改善が見られることがあります。しかし、過度な期待は禁物で、あくまで軽度の変色に対する一時的な対策と考えるべきです。
また、ホワイトニング用の歯磨き粉は研磨剤を含んでおり、歯の表面に無数の小さな傷がつく可能性があります。この傷の中に色素が入りやすくなるため、一時的にはレジンが白くなっても、今後また着色が起こるリスクがあります。
歯科での治療法
変色が多少進んでも、歯科医院での専門的な器械を使用してのクリーニングである程度落とせる場合があります。着色が濃くなる前のタイミングでクリーニングを受けることが推奨されます。
どうしても着色が気になる場合は、レジンを詰めなおす
どうしても変色が取れない場合や、詰め物が劣化している場合は、レジンの詰め物をやり替えることが必要です。定期的なメンテナンスと適切なタイミングでの交換により、美しい前歯を維持することができます。
ただ、レジンを詰め直す際にはレジンの周囲をほんの少し削ることになるため、詰め直しは何度も行うわけにはいきません。歯を削った部分の場所や大きさによっては、詰め物・被せ物の治療に移行する必要があります。
変色しにくい詰め物に替える
レジンの詰め物の寿命は2~5年程度といわれます。これは、機能的には問題がない場合も、着色によって見た目が悪くなるという理由によります。
一方、セラミックやジルコニアといった素材で歯を治療すると、10~20年程度は使用できます。これらの素材は透明感があり天然歯と見分けがつきにくいほど自然な色合いが出せることから、審美的に大変優れています。
セラミックやジルコニアの詰め物・被せ物に変えると、一度治療してからかなり長くそのまま使えるようになります。ただし、セラミックやジルコニアは保険がきかない自由診療となりますので、治療費が高くなります。
まとめ
前歯のレジンの詰め物は変色しやすく、レジンでの歯のつぎはぎが目立つ場合があります。変色が気になる場合はまず定期健診で歯のクリーニングをしてもらい、それでも色の違いが気になる場合は、レジンの詰め物をやり替えるか、セラミックなどの自費の素材に変えるという方法があります。