被せ物治療は、虫歯によって損傷した部分を補強し、噛む機能や審美性を回復します。被せ物の素材には様々な選択肢があり、それぞれの利点や特徴を理解することが大切です。被せ物治療の具体的な流れや治療期間、さらに痛みを抑える工夫についてご説明します。
被せ物とは?
被せ物(クラウン)は、歯が大きく損傷した際に、形や機能を補うために装着される人工の歯のことです。主に以下の場合に用いられます。
- 大きな虫歯の治療後
- 歯が割れた場合
- 根管治療後の補強
- 審美的な改善(形や色)
被せ物には、金属製、セラミック製、ジルコニア製などの素材があります。それぞれ特性や見た目が異なるため、患者さんの希望や予算に合わせて選ぶことが可能です。
被せ物の種類と素材の選択肢
被せ物に使われる主な素材は以下のようなものです。
- メタルクラウン(金属冠)・・耐久性が高いが審美性に劣る
- セラミッククラウン・・自然な見た目で審美性が高い
- ジルコニアクラウン・・強度と審美性を兼ね備えた高品質な素材
被せ物の治療方法・流れ
虫歯の範囲が大きかったり、神経の治療が終わった後に被せ物の治療に入っていきます。
▼神経の治療方法・流れはこちらでまとめています。
https://matsumoto.or.jp/toothteeth/pulp-treatment/
1. 初診と診断
- レントゲン撮影・・歯とその周辺の状態を確認します。
- 治療計画の説明・・患者さんの症状や希望に応じて、適切な被せ物の種類や治療方針を提案します。
2. 土台を作る
神経の治療が終わって、そのままでは被せ物を被せることができません。被せ物をしっかりつけられるよう、まずは土台を作っていきます。神経を抜いていない場合は、歯を削りながら土台の形を作っていきます。
- 歯の削り出し・・被せ物を装着するために、歯を適切な形に削ります。虫歯がある場合は、虫歯を完全に除去します。根管治療後の場合は、歯を補強するための土台(コア)を作ることもあります。
- 型取り・・専用の材料や3Dスキャナーで歯型を取ります。この歯型を基に被せ物が作成されます。
3. 型取りをする
図は全体の型取りなので被せ物とは少し違いますが、このような材料を使って型取りをしていきます。小さな虫歯であればそのままプラスチックを詰めるだけで済みましたが、被せ物となるとそれを作るために型取りをしないといけません。
プライムスキャンという機械を使用して小さなカメラをお口の中に入れて歯型のデータを取る場合もあります。
4. 歯型から模型を作る
型取りでできた歯型から、石膏を使って模型を作っていきます。
5. 模型をもとに被せ物を作る
石膏でできた模型をもとにして被せ物を作っていきます。この作業は歯科技工士の仕事です。医院内で作っていることもあれば、技工所という外の施設に頼んで作ってもらうこともあります。
このような流れがあるので、型取りをしてから被せ物が出来上がるまでには1週間ほどかかることが多いです。
素材による違い
- セラミック:自然な色合いで、見た目が美しい。
- 金属:耐久性が高く、奥歯に適している。
- ジルコニア:高い審美性と強度を兼ね備える。
6. 被せ物をセット
患者さんの予約に合わせて被せ物が出来上がってきます。
1週間ほど後に再度来院してもらい、被せ物を入れます。接着剤でつける前に実際にお口の中に入れ、つけた感じやかみ合わせなどを調整していきます。問題なければ接着剤でしっかりつけます。
- 被せ物が完成したら、歯に仮装着して適合性や見た目を確認します。
- 問題がなければ、専用の接着剤で固定します。
被せ物の治療は痛い?
神経を抜いた歯では、基本的に痛みが出ることはありません。神経の治療が不十分であると痛みを感じます。神経を抜いていない場合では、場合によっては痛みをともなうこともあります。
- 麻酔の使用・・痛みを軽減するために局所麻酔を使用するケースが多い
- 治療後の違和感・・装着後に一時的な違和感があるが、数日で慣れることが多い
被せ物の治療はどれくらい時間がかかる?
以下は目安としてください。
- 1回目:土台を作って型取り 30分〜1時間ほど
- 2回目:被せ物のセット 30分ほど
被せ物を入れる準備をしてから、実際にお口の中に被せ物が入るまで最低2回の来院が必要です。
一人一人に合った被せ物を作るためには、型取りをしなくてはいけません。この型取りの後、実際に被せ物が出来上がるまでに1週間ほどかかることが多いです。そのため1週間後にまた来てもらう必要があるのです。
被せ物が入るまでは1週間ほどかかるのが一般的でしたが、実はその常識を覆す歯科医院が現れました。
型取りは歯科医師や歯科衛生士の仕事ですが、その型をもとに被せ物を作るのは歯科技工士の仕事です。技工士は基本的に歯科医院ではなく、技工所にいます。
つまり医院でとった歯型を、歯科技工所に持って行かなくてはいけません。毎日歯科技工所に行くわけにもいかないので、医院ごとに曜日を決めて運搬していることがほとんどです。
「1日で終わる治療」を実現させたのは、最新の技術です。型取りをしたら歯科技工所に持って行かず、最新の技術を使ってその場で被せ物を作り上げます。つまり機械で被せ物を作っていくので、時短かつ品質の高さが実現しました。また人件費もかからないため価格も下げられます。
神経の治療が必要であれば何度か通院が必要ですが、被せ物自体は1日で本物が入ります。これなら仕事で忙しかったり、歯医者が苦手で治療を早く終わらせたいという方も安心ですね!
歯の被せ物の治療が必要なのはどんなとき?
歯の被せ物(クラウン)は、主に歯を保護し、機能や見た目を改善するために用いられます。以下では、被せ物が必要とされる代表的なケースをご説明します。
1. 虫歯が進行している場合
被せ物の治療が必要となるもっとも一般的な理由は、進行した虫歯です。虫歯が広範囲に及び、詰め物(インレー)だけでは補えない場合、被せ物で歯を全体的に覆って保護する必要があります。
進行度の目安
- 軽度の虫歯:詰め物や歯の一部の修復で対応可能。
- 重度の虫歯:被せ物が必要。
2. 根管治療後の歯
歯の神経を取る根管治療を行った歯は、強度が著しく低下します。そのままでは割れるリスクが高いため、被せ物で補強します。
理由
- 神経がなくなると歯が脆くなる。
- 噛む力に耐えられるよう、全体を覆う必要がある。
3. 歯が大きく欠けたり、割れたりした場合
転倒や事故、硬いものを噛んで歯が大きく欠けたり割れたりした場合、被せ物が必要になることがあります。特に、歯の構造が半分以上失われた場合、被せ物が最適な治療法とされます。
適用されるケース
- 歯の修復面積が広い場合。
- 元の形状を維持するのが難しい場合。
4. 美容目的での改善
歯の形や色、配置が気になる場合、被せ物を用いた審美治療が選ばれることがあります。特に、前歯に関しては自然な見た目を重視するセラミック製の被せ物が多く使用されます。
主な目的
- 歯の変色や黄ばみの改善。
- 歯並びや形状を整える。
5. 噛み合わせの調整が必要な場合
不正咬合(かみ合わせの異常)がある場合、被せ物を用いて適切なかみ合わせを形成することがあります。これにより、顎関節症の予防や噛む機能の改善が図られます。
まとめ
歯の被せ物治療は、虫歯や神経の治療を経て歯の機能を回復させる大切なプロセスです。最新技術の導入により、治療のスピードや精度が向上し、患者さんの負担が軽減されています。また、適切な素材を選ぶことで、機能性だけでなく審美性も高めることが可能です。治療後に長持ちさせるためには、定期的な健診とセルフケアが欠かせません。