
子供の前歯に見られる歯並びの問題は、乳歯から永久歯への生え変わりの時期に、顎の成長や歯の位置の変化が起こるため、注意深く観察することが重要です。前歯に起こりやすい代表的な歯並びの問題とその原因、適切な対処法についてご説明します。
子供の前歯に見られる悪い歯並び

生え変わりの時期など子供の前歯によく見られる歯並びの問題には、以下のようなものがあります。
- 前歯の間に隙間がある
- 乳歯前歯が抜ける前に永久歯前歯が生えてきた
- 乳歯前歯が抜けたのに永久歯が生えてこない
- 前歯が斜めに生えてきた
- 遺伝的要因によって起こる悪い歯並び
- 呼吸の問題で起こる悪い歯並び
1. 前歯の間に隙間がある
乳歯の場合は、むしろ隙間があることが正常です。

乳歯前歯の隙間
乳歯前歯で歯と歯の間に隙間がある場合、これは問題ありません。
乳歯から永久歯に生え変わるまでの間もあごは成長し続け、前歯など歯と歯の間に隙間が空くことがあります。これは、永久歯がきれいに並ぶためにスペース確保をしている証拠。むしろ乳歯の時点で歯と歯の間の隙間がない場合、あごが小さく、将来的に永久歯がきれいに並びにくい可能性があります。
生え変わり途中(乳歯・永久歯)前歯の隙間
永久歯へ生え変わり途中での前歯のすきっ歯は、歯科医院に相談し様子を見ましょう。成長とともに前歯の隙間がふさがることもあるからです。
永久歯前歯の隙間
完全に永久歯に生え変わった後(12歳前後)でも、前歯の歯と歯の間に隙間がある場合。これはあごに対して歯のサイズが小さい、歯の本数が足りていないなどが考えられます。歯並びを治すために歯列矯正が必要とされることがあります。子供の歯並びに詳しい歯科医院で相談してみましょう。
2. 乳歯前歯が抜ける前に永久歯前歯が生えてきた
乳歯前歯が揺れている場合
乳歯前歯がまだ抜けていないのに、永久歯前歯が生えてきた(見えてきた)・・・!実はこのような状態は、珍しいことではありません。
まだ抜けていない乳歯前歯はぐらぐら揺れていませんか?これは抜ける準備ができている証拠なのでです。歯の生え変わりのタイミングなどは、一般例こそあるものの個人差があります。乳歯前歯はいずれ自然と抜け、早めに生えてきた永久歯前歯も正しい位置に動いていくでしょう。
乳歯前歯が揺れていない場合
同じ状況でも乳歯前歯が揺れていない場合。この場合は、まだ抜けていない乳歯前歯を抜歯する必要があるかもしれませんので、歯科医院に相談してみましょう。
3. 乳歯前歯が抜けたのに永久歯前歯が生えてこない
乳歯前歯が抜けてから半年くらいまでは様子を見ましょう。
乳歯前歯が抜けてから半年くらいまで
この場合、多くは自然と治ります(永久歯前歯が生えてきます)。これは先述のとおり、歯の生え変わりなどは一般例こそあるものの個人差があるから。3ヶ月〜半年くらい長い目で様子を見ましょう。
乳歯前歯が抜けて半年経っても変化がない場合
それでも永久歯前歯が生えてこない場合は、何か問題がある可能性があります。歯科医院で相談してみましょう。
4. 前歯が斜めに生えてきた
はじめからきれいに生えてくることはむしろ珍しいです。
乳歯が斜めに生えてくるなど、きれいに生えてこないことは珍しくありません。あごの成長にともなって歯の向きやねじれ、位置などは自然と治ってくることが多いです。
永久歯に生え変わり始めても、あごの成長や隣の歯の影響を受けて歯の向きなどは変化していきます。明らかに斜めに生えてきたり(目安はねじれの角度が60°以上)、明らかに違う位置から生えてきたり(目安は他の歯並びより5mm以上のずれ)などがある場合は、早めに歯科医院で診てもらうとよいでしょう。
5. 遺伝的要因によって起こる悪い歯並び
悪い歯並びは、子供の成長過程での癖や環境要因だけでなく、遺伝による影響も無視できません。例えば、顎の大きさや形、歯の大きさが遺伝することで、スペース不足や歯の生える位置の異常が起こることがあります。家族に不正咬合や悪い歯並びの傾向がある場合、子供にも似た問題が起こりやすいです。
対処法
遺伝的な要因を防ぐことは難しいですが、早期に歯科健診を受けて成長過程を観察し、必要であれば適切な時期に矯正治療を開始することで、悪い歯並びを改善できます。
6. 呼吸の問題で起こる悪い歯並び
口呼吸が歯並びに影響を与えることがあります。鼻詰まりやアレルギーによって口呼吸が習慣化すると、舌の位置が下がり、上顎が狭くなることがあります。これにより、前歯が突出する、または歯が並びきらずに叢生になる原因となります。
対処法
口呼吸の原因を早期に特定し、鼻詰まりの治療やアレルギー対策を行うことで、歯並びへの影響を軽減できます。また、口呼吸を改善するために、口腔筋機能療法(MFT)を併用することが効果的です。
子供の前歯の歯並びが悪くなるのを防ぐための注意点
子供の前歯の歯並びが悪くなる原因は、生活習慣や成長過程に影響を受けることが多いです。
1. 乳歯のケア
乳歯はやがて抜けて永久歯に生え替わりますが、その役割は非常に重要です。乳歯が早期に失われると、永久歯が正しい位置に生えるスペースが不足する可能性があります。
乳歯のむし歯を防ぐ
- 歯磨きを習慣化し、特に食後のケアを徹底します。
- 歯磨き粉にはフッ素を含むものを選ぶ。
- 3~6か月ごとに歯科健診を受ける。
乳歯の早期喪失に注意
乳歯がむし歯などで抜けてしまうと、隣の歯が移動し永久歯のスペースが狭くなる可能性があります。必要に応じてスペースメンテナーを装着することが推奨されます。
2. 指しゃぶりや舌癖の改善
長期的な指しゃぶりや舌を押し出す癖は、不正咬合の原因となることがあります。
指しゃぶり
3~4歳を超えても続けている場合、歯並びや顎の発育に影響を及ぼします。やめるためのサポートとして:
- 指しゃぶりをする場面や原因を観察し、代わりとなる安心感を提供する。
- 指しゃぶり防止のための専用の道具を使用する。
舌癖(舌の位置が不適切)
舌が常に前歯を押していると、歯が前方に出てしまうことがあります。舌の位置を正すための舌トレーニングや、歯科医でのアプローチを検討します。
3. 正しい食生活を習慣化する
顎の正常な発達には、適切な食生活が重要です。
硬いものを噛む習慣
柔らかい食べ物ばかりでは、顎の発達が不十分になります。硬めの食材(りんごやにんじんなど)を積極的に取り入れ、しっかり噛む習慣を促します。
バランスの取れた栄養
骨や歯の発育をサポートするために、カルシウムやビタミンDを多く含む食品(牛乳、魚、緑黄色野菜など)を摂取することが大切です。
4. 良い姿勢を保つ
姿勢が悪いと、顎の発達や歯列にも影響を与えることがあります。
正しい姿勢
猫背や首が前に出た状態は、口呼吸や顎の位置の不整合を招くことがあります。椅子に座る際には、背筋を伸ばし足を床につけるよう意識します。
口呼吸を防ぐ
口呼吸は歯並びや顎の発達に悪影響を与えるため、鼻呼吸ができる環境を整えます。鼻づまりなどの原因がある場合は耳鼻科での診察を受けることが重要です。
5. 定期的な歯科健診
歯科健診では、歯並びの状態や顎の成長を確認できます。
健診の頻度
3~6か月ごとに歯科医院でチェックを受けることで、問題を早期に発見・対処できます。
矯正治療の早期相談
不正咬合が懸念される場合、専門医に相談して適切なタイミングで治療を開始します。小児期の矯正治療は、成長を利用して効果的に行える場合が多いです。
子供の前歯の歯並びを整えるためには、乳歯のケア、悪習慣の改善、食生活、姿勢、歯科健診の5つのポイントを意識することが大切です。
まとめ

子供の前歯に見られる歯並びの問題は、成長過程で自然に改善される場合もありますが、永久歯の生え変わり後に問題が残ることもあります。
特に、すきっ歯や斜めに生えてきた歯、永久歯が生えてこないといった異常が見られる場合には、早めに歯科医院で診察を受けることが大切です。
また、口呼吸や舌の癖など生活習慣が歯並びに影響を与えることも多いため、日常的な習慣の見直しや早期介入を心がけましょう。