よくあるご質問
子供の歯

子供の受け口・しゃくれの原因

子供の受け口・しゃくれの原因4選

まつもと歯科 理事長・総院長 松本 正洋

今回は「子供の受け口の原因」について書いていきます。

子供の受け口(しゃくれ)の原因

赤ちゃん

上あごが小さかったり、逆に下あごが大きかったり、あごの大きさに問題はなくても上の前歯が内側に傾いているとこのような歯並びになります。

1. 遺伝によるもの

子供の受け口やしゃくれの原因として最も一般的なのが、遺伝です。両親のどちらか、あるいは祖父母など家族に同じような噛み合わせの特徴を持つ人がいる場合、その遺伝子が影響していることが多いです。特に、顎の骨の大きさや成長パターンは遺伝の影響を強く受けやすいため、顎が前に突出するしゃくれの傾向も受け継がれることがあります。

2. 環境によるもの

遺伝だけでなく、生活習慣や癖などの環境的要因も、子供の受け口やしゃくれに影響を与えることがあります。以下が主な例です。

指しゃぶり

長期間の指しゃぶりやおしゃぶりの使用は、歯並びや顎の成長に影響を与えることがあります。特に、下顎が前に出やすくなることがあります。

指しゃぶりは自体は悪いことではありません。指しゃぶりは3〜4歳ころにはやめていた方が良いとされています。この理由は歯並びに影響を与えるからです。

指しゃぶり=前歯で指をかんでおり、前歯が指に押されている状態です。これを何年も続けているとさすがに歯並びにも影響してくるというわけです。

指しゃぶりだけでなく、舌で前歯を押す癖や頬杖など、歯に力がかかるような癖は受け口(しゃくれ)の原因となりえます

舌の癖

舌を押し出す癖(舌突出癖)や、飲み込み時に舌を前に出す癖がある場合、前歯や下顎に不自然な圧力がかかり、しゃくれの原因となることがあります。

口呼吸

口呼吸をする習慣がある場合、下顎が常に前に出てしまうことがあり、その結果、顎の位置が固定されて受け口やしゃくれが進行することがあります。

鼻炎など、鼻詰まりがあると鼻で呼吸ができず口呼吸になります。口呼吸が癖になっていると受け口(しゃくれ)になりやすいと言われています。

口を閉じているとき、舌は上あごについているのが舌の正しい位置。これにより上あごに適度な力がかかり、上あごの成長にも関わります。

しかし先ほどのように口呼吸=口がずっと開いている状態が続くと、上あごや下あごの成長に影響が出たり下あごを前に突き出す癖がついてしまい、受け口(しゃくれ)になるとされています。

3. 骨の成長の片寄り

子供の成長期における顎の骨の成長速度が不均衡な場合、受け口やしゃくれが発生することがあります。具体的には、下顎が過剰に成長する、または上顎の成長が不十分な場合に、顎のバランスが崩れてしゃくれや受け口が顕著になります。

下顎の過成長

下顎が上顎よりも早く、または大きく成長する場合、前に突出してしゃくれの状態になります。この成長バランスの崩れは、遺伝だけでなく、成長期の影響も強く受けます。

上顎の劣成長

上顎の発育が遅れたり不十分であると、自然に下顎が前に出て見えることがあり、受け口のような状態になります。

4. 早期の歯の喪失

乳歯や永久歯が早期に抜け落ちることで、顎の成長に影響を与えることがあります。特に、奥歯が失われると噛み合わせが崩れ、前歯や顎に負担がかかり、受け口やしゃくれのような状態になることがあります。また、永久歯がまだ生えていない時期に歯を失うことで、自然な噛み合わせが乱れる可能性もあります。

5. 不正咬合

咬合の不正、つまり噛み合わせが正常でない状態も、子供の受け口やしゃくれに影響を与えます。不正咬合の原因としては、以下のようなことが考えられます。

上顎前歯の位置異常

上顎の前歯が内側に傾いている場合、下顎が自然に前に出るようになります。これにより、顎がしゃくれたように見えることがあります。

歯列の乱れ

歯が重なって生える、または歯列が乱れている場合、自然な噛み合わせができず、顎が前に出やすくなることがあります。

子供の受け口・しゃくれで起こる問題

赤ちゃん

1. 噛み合わせの問題

受け口やしゃくれは、上下の歯の噛み合わせに問題を引き起こします。正常な噛み合わせでは、上の歯が下の歯に少し重なるような形で噛み合うのが理想です。しかし、受け口やしゃくれの場合、下顎が前に出ているため、噛み合わせが逆になり、以下の問題を引き起こすことがあります。

食べ物をうまく噛めない

噛み合わせが正常でないと、食べ物を十分に噛み砕くことができず、消化不良や胃腸の負担増加につながります。

歯への負担が増える

噛み合わせの異常により、特定の歯や顎に過度な力がかかり、歯が磨り減ったり、顎の関節に問題を引き起こすことがあります(顎関節症)。

2. 発音障害

受け口やしゃくれは、発音にも影響を与えることがあります。特に「サ行」や「タ行」などの音を発音する際に、舌の位置や口の形が関係するため、発音が不明瞭になることがあります。このため、話すときに他人に理解されにくくなり、子供にとってのストレスや自信の喪失につながることがあります。

3. 見た目のコンプレックス

しゃくれや受け口は、顔の外見に大きく影響を与えるため、子供が見た目に対してコンプレックスを感じることがあります。特に、他の子供からからかわれたりすることが原因で、精神的な負担が増え、自己肯定感の低下や社交性の喪失に繋がる可能性もあります。長期的には、これが心理的な問題として表面化することもあります。

4. 顎関節の問題(顎関節症)

噛み合わせの異常は、顎関節にも負担をかけることがあります。受け口やしゃくれの状態が長期間続くと、顎関節に不自然な力が加わり、顎関節症(顎を開けると音がする、痛みがある、開閉がしづらいなど)を引き起こすリスクが高まります。顎関節症は、痛みだけでなく、食事や会話にも支障をきたすため、生活の質に影響を与えます。

5. 顔立ちの変形

受け口やしゃくれは、顎の成長に影響を与え、顔立ちにも変形を引き起こすことがあります。下顎が前に出ていると、顎のラインが強調され、顔全体のバランスが崩れることがあります。また、顎の突出が進行することで、横顔のバランスも乱れ、全体的な顔の印象に影響を与えます。これは外科的な処置が必要な場合もあるため、早期の対応が望まれます。

6. 歯の磨耗や損傷

受け口やしゃくれが原因で、前歯や奥歯が通常以上にすり減ることがあります。噛み合わせが悪いと、歯が不自然な形で接触し、磨耗が早く進んでしまうことがあり、これがさらに歯の損傷や虫歯のリスクを高める要因となります。

子供の受け口・しゃくれの治療方法

赤ちゃん

歯科検診などで指摘されたら早めに相談し、早めに矯正治療を始めると良いでしょう。子供の場合、骨が成長し続けています。そのため受け口(しゃくれ)の治療は、大人のように歯並びを治すというよりは、骨格的な部分を治すのが治療の目標となってきます

骨が成長し続けているということは、まだ骨も比較的柔らかく動きやすいです。そのため矯正治療は大人よりスムーズで、治りやすいと言われています。

治療法 説明
予防的矯正治療 早期の矯正治療により、受け口やしゃくれの進行を防ぐことが可能です。→ムーシールドプレオルソ
外科的治療 重度の場合、下顎骨の位置を修正する手術が必要なことがあります。→下顎セットバック整形
舌の訓練 専門の指導を受けて、舌の位置や動きを改善する訓練が有効です。→PRO矯正

子供の受け口・しゃくれについてまとめ

歯のキャラクター

子供の受け口やしゃくれは、遺伝や生活習慣、骨の成長不均衡などが原因で発生します。その結果、噛み合わせの問題や発音障害、顎関節の負担、見た目に対するコンプレックスなどが起こります。早期に発見し、適切な治療を行うことで、これらの問題を予防・改善することが可能です。子供の成長段階で歯並びや顎の状態に注目し、必要に応じて専門家の診断を受けることが大切です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

▶プロフィールを見る