子供の歯が折れる事故が起こった時には迅速で適切な対応をすることで、歯を元の状態に近づけることができる可能性が高まります。折れた歯の保存方法や歯科医での処置、乳歯と永久歯の違いによる対応方法をご説明します。
子供の歯が折れたときにまず確認すること
歯が折れた時、子供は痛みや驚きでパニックになることが多いです。保護者はまず子供を安心させ、状況を冷静に確認しましょう。出血している場合は清潔なガーゼや布で軽く押さえ、止血します。痛みが強い場合は、冷やすことで痛みを和らげることができます。
子供が転倒や衝突で歯を折ってしまった場合、以下の点をまず確認しましょう。
折れた歯が乳歯か永久歯かを確認
乳歯であれば、再植が難しい場合がありますが、永久歯の場合は保存が可能なことが多いです。
歯茎や口内の損傷の有無
出血がある場合はガーゼや清潔な布で止血し、腫れがある場合は冷やすと良いです。
歯の破片が残っているか
折れた歯の破片があれば回収し、歯科医院に持参してください。
折れた歯を探して保存する
歯が完全に抜け落ちたり、破片がある場合は、できるだけ歯やその破片を探し出し、保存することが大切です。特に永久歯の場合、素早く処置を行うことで元の位置に戻すことが可能なケースもあります。折れた歯や破片は、水で軽く洗い流し、清潔な状態で保存しましょう。
折れた歯の保存方法
- 折れた歯を触る場合、歯の根元(歯根)には触れないように注意してください。歯の表面(エナメル質)だけを持つようにしましょう。
- 保存する際は、牛乳や生理食塩水に浸すか、急ぎの場合は口の中に入れて唾液で保持することもできます(ただし、子供が誤飲しないように注意が必要です)。
すぐに歯科医に連絡する
子供の歯が折れた場合、できるだけ早く歯科医に相談することが重要です。特に永久歯の場合、早期の治療が成功率を大きく左右します。折れた歯の状態や位置によって、治療方法は異なりますが、迅速な対応が歯の保存に役立ちます。
歯科医には以下の点を伝えます
- いつ、どのような状況で歯が折れたのかを伝える。
- 折れた歯や破片を保存した方法を伝える。
- 子供の口の中の痛みや腫れの程度を確認して伝える。
乳歯と永久歯それぞれへの対応
折れた歯が乳歯か永久歯かで、対応が違います。
乳歯の場合
子供がまだ乳歯の時期に歯が折れた場合、永久歯がその後に生えてくることが期待されるため、必ずしも折れた歯を元に戻す必要はない場合があります。ただし、歯の根が残っていると感染症を引き起こす可能性があるため、歯科医での診察が必要です。
永久歯の場合
永久歯が折れた場合、できるだけ早く元に戻すことが治療の基本です。折れた歯を戻すことで、歯の機能と美しさを取り戻すことができる可能性があります。
応急処置の方法
子供の歯が折れた場合、迅速な応急処置が大切です:
- 口内を清潔に保つ
- 折れた部分に汚れが入らないよう、うがいや水で口を軽くすすいでください。
- 強い力でうがいをすると痛みが増す可能性があるため、注意が必要です。
- 折れた歯や破片を保存する
- 折れた歯や破片を見つけた場合、水で軽くすすぎます。ただし、歯根を擦らないように注意してください。
- 保存する際は、牛乳、生理食塩水、または口内に保持すると良いです。水道水では長時間の保存が難しいため避けてください。
- 痛みや腫れを和らげる
- 冷却シートやアイスパックで患部を冷やすことで、腫れや痛みを軽減します。
- 市販の鎮痛剤を使用する場合は、必ず用法を守り、必要に応じて歯科医師に相談してください。
子供の歯が折れた時に行うこと
子供の歯が折れたり抜け落ちてしまった場合、牛乳や歯牙保存液という液体に浸けましょう。抜けたり折れた歯を持参して、すぐに子供と歯医者さんを受診すれば、ケースによっては歯を復元することが可能です。
子供の歯が折れた時に医院で行うこと
歩き始めたばかりの小さい子供は脱臼が起こりやすいです。歯槽骨もまだまだ柔らかく、歯にかかった衝撃で歯が歯肉にめり込む・歯の角度がずれる・歯が抜け落ちるということが多くなります。
歯科医院での治療の流れ
歯が折れた場合、早急に歯科医院を受診することが必要です。一般的な治療の流れは以下の通りです。
- 診断とレントゲン検査
- 折れた歯の状態や歯根の損傷を確認します。
- 歯茎や周辺の骨に問題がないかをチェックします。
- 治療方法の選択
- 軽度の場合: コンポジットレジン(歯科用樹脂)で修復。
- 中程度の場合: クラウン(被せ物)で補強。
- 重度の場合: 歯髄炎や感染のリスクがあるため、根管治療が必要となる場合があります。
- 再植の可能性
- 折れた永久歯の一部が完全に抜け落ちた場合、再植が可能なケースがあります。ただし、時間が経つほど成功率が下がるため、速やかな対応が重要です。
亜脱臼のケース
亜脱臼はグラグラと動揺が見られるものの歯の位置がとどまっている状態です。歯根の部分が折れていないか歯科医師による確認をし、軽度の亜脱臼と診断された場合は、固い食べ物を噛まないなど医師より指導を受け、約1週間経過観察を行うことが多いです。ただ、柔らかい食べ物を噛んでも子供が痛みを訴えている場合は、隣の歯と負傷した歯をレジン(歯科用プラスチック)で接着して固定するという治療を行います。約2週間程度経ってから、歯科医院で状態を確認します。
歯周組織を改善するためには、歯周組織を衛生的に保つ必要があります。うがい薬を口腔内に行きわたらせることで清潔に保ち、腫れが治まってきたら、しっかり歯磨きを行いましょう。しっかりめの歯磨きとは、強く歯を磨くことではありません。柔らかい歯ブラシで時間を多めにかけてきちんと磨くことをおすすめします。
脱臼のケース
歯が抜けてしまうなど位置が異なることを脱臼と呼びます。
- 歯を保存液か牛乳に湿潤させた状態で持っていくこと
- 2時間以内に歯医者さんで処置をしてもらうこと
この二つの条件がそろった状態で、再植という歯を元に戻せる可能性が高まります。歯を元に戻し約10日程固定すると、歯根膜と歯槽骨が接着し正常に機能します。
歯根膜と歯槽骨がくっつかず、歯槽骨と歯がくっついてしまうと、他の歯は歯根膜があるため、歯根膜の高さ分、歯の長さが異なります。そのような状態が長く続くと歯根吸収を起こし、歯が抜けるリスクが高まります。また、歯肉から出血が多い場合は、歯肉を縫合する止血の治療を行います。
歯の変色
打った当初は何も変わらなかったのに、歯の色が変わってきた場合は、歯の内部で内出血を起こしています。内出血のみでしたら元通りに回復する可能性はありますが、歯がだんだん黒ずんできたという変色の仕方の場合、神経(歯髄)が死んでしまった可能性が高いです。神経が死んだ歯を放置すると、歯根に細菌感染が起きる方もおられます。歯の色が変わりかけていると思われたら、歯科医院でレントゲンなど精密検査を行い、ドクターの診断を仰ぎましょう。
歯根破折や歯槽骨骨折の場合は、かなり長い期間固定します。歯をなるべく残す治療法をどの医院も探ると思いますが、歯を残すことを天秤にかけてデメリットが多いと、抜歯になる可能性もあります。
まとめ
子供の歯が折れた際には、まず冷静に状況を確認し、出血や痛みへの対処を行います。そして、折れた歯や破片を清潔に保存し、できるだけ早く歯科医に相談することが重要です。
永久歯の場合は迅速な治療が特に大切で、折れた歯の保存状態によって折れた部分を歯に戻せるかが決まります。
日頃から歯科医院での定期健診を受け、トラブルに備えることも大切です。