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歯並び・歯列矯正

硬いものを噛むことと顎の大きさの関係とは?

硬いものを噛むことと顎の大きさの関係とは?

現代の食生活では、柔らかい食品が主流となり、硬いものを噛む機会が減少しています。これに伴い、顎の大きさや形状に変化が生じているとの指摘があります。硬いものを噛むことが顎の発達にどのような影響を与えるのか、ご説明します。

顎の大きさは何で決まるの?

顎

顎の大きさは主に以下の要因によって決まります。

  • 遺伝的要因・・顎の形状や大きさは、親から子へと遺伝する傾向があります。
  • 栄養状態・・成長期に十分な栄養を摂取することで、骨の発達が促進されます。
  • 機能的要因・・咀嚼(噛むこと)や呼吸などの機能が顎の発達に影響を与えます。

これらの要因が複合的に作用して、個々の顎の大きさや形状が決まります。

硬いものを噛むことの影響

ナッツ

硬いものを噛むことは、単に食べ物を細かく砕くためだけではなく、顎やお口全体、さらには全身にまで影響を及ぼします。

1. 顎の骨と咀嚼筋の発達

硬いものを噛む咀嚼の動作は、顎の骨や筋肉に直接的な刺激を与えます。この刺激は以下のように機能します。

骨の強化

  • 骨は圧力や負荷がかかることでその密度が高まる性質があります。硬い食べ物を噛むことで顎の骨に適度な負荷がかかり、骨密度が向上します。これにより、顎の骨が丈夫になり、歯をしっかりと支える土台が強化されます。
  • 特に成長期の子供は、硬い食べ物を噛む習慣が顎の発達に繋がります。

咀嚼筋の強化

  • 咀嚼筋(噛むための筋肉)は硬いものを噛むことによって筋肉が鍛えられ、顎の形や咬み合わせに良い影響を与えることが知られています。
  • 咀嚼筋が発達することで、しっかりとした咬み合わせが形成され、食べ物を効率よく咀嚼できるようになります。

2. 顎の形と顔の形への影響

硬いものを噛む習慣が不足すると、顎の発達が不十分になり、顔貌(顔の形)にも影響を与えることがあります。

顎が小さくなる傾向

  • 柔らかい食べ物ばかりを食べると、顎に十分な刺激が伝わらず、顎の発育が制限される場合があります。その結果、顎が小さくなり、歯が並ぶスペースが不足して不正咬合の原因になることがあります。

歯列不正のリスク

  • 顎が適切に発達しないと、歯が綺麗に並ぶスペースが不足し、八重歯など、歯並びが乱れることがあります。硬いものを噛むことは、将来歯列矯正を受けなければならないような事態にならないように予防するためにも重要です。

顔のバランスの変化

  • 咀嚼筋や顎の骨が発達することで、顔の下半分に立体感が生まれ、バランスの取れた顔貌が形成されます。硬いものを噛むことを怠ると、顎が発達せず、顔が平坦な印象になる場合があります。

3. 消化機能への影響

硬いものをしっかりと噛むことは、消化器官の健康にも重要な役割を果たします。

消化の効率化

  • 食べ物を細かく噛み砕くことで、胃腸に負担をかけずに消化することが出来ます。
  • 良く噛むと唾液の分泌が増えることで、唾液中の酵素(アミラーゼ)が食べ物の消化を助け、胃腸の負担を減らします。

満腹感が得られる

  • 硬いものを噛むことで食事時間が長くなり、脳の満腹中枢が適切に刺激されます。その結果満腹感が得られ、過食を防ぎ、肥満予防にもつながります。

4. 神経系や認知機能への影響

硬いものを噛むことは、顎や歯だけでなく、脳にも影響を与えると言われています。

脳への刺激

噛む動作は顎の筋肉を通じて脳に刺激を伝える役割を果たします。この刺激は脳の血流を増加させ、記憶力や集中力を向上させる効果があると考えられています。

ストレス軽減

咀嚼にはリラックス効果があり、ストレス軽減に寄与することがわかっています。硬いものを噛むことで咀嚼回数が増え、精神的な安定感を得られることがあります。

5. 免疫力が上がる

咀嚼によるって唾液の分泌が増えることは、口腔内の健康維持に役立つだけでなく、全身の健康にも繋がります。

唾液の抗菌作用

  • 唾液中には抗菌成分が含まれており、これらが口腔内の細菌繁殖を抑制します。
  • 硬いものを噛むことで唾液分泌が促進され、免疫機能の向上が期待されます。

虫歯や歯周病の予防

  • 唾液の増加により歯垢が付きにくくなり、虫歯や歯周病の予防に繋がります。

6. 硬いものを噛みすぎたときの注意点

硬いものを噛むことには多くのメリットがありますが、過度に硬いものを頻繁に摂取することにはリスクもあります。

歯の損傷

  • 硬いナッツ類や氷などを無理に噛むと、歯が欠けたり、詰め物や被せ物が外れる原因となることがあります。

顎関節症

  • 顎関節に過剰な負担がかかることで、顎関節症を引き起こす可能性があります。顎の痛みや口の開け閉めがしにくくなるなどの症状が現れることがあるため、硬いものの摂取は適度に行うことが推奨されます。

硬いものを噛むことは、顎や口腔全体の健康だけでなく、全身の健康にも多くのメリットをもたらします。特に成長期には、硬いものを適度に噛む習慣が、顎の発達や歯並びの形成に重要な役割を果たします。しかし、硬いものを噛みすぎると歯や顎関節に負担をかけることもあります。

現代人の食生活と顎の変化

現代の食生活では、柔らかい食品が増えて噛む回数が減少しています。その結果、顎の発達に影響を及ぼし、顎が小さくなる傾向が指摘されています。

1. 柔らかい食品の増加

現代の食生活では、加工食品や調理済み食品が増え、咀嚼を必要としない柔らかい食品が主流になっています。

2. 咀嚼回数の減少

柔らかい食品が多いと噛む回数が減少し、顎への刺激が不足します。

3. 顎の発育不全

成長期に顎に十分な刺激がないと、顎の骨の発達が不十分になり、小さい顎になりやすいです。

4. 歯列不正の増加

顎が小さくなることで、歯が並ぶスペースが不足し、不正咬合や歯並びの乱れが増える傾向があります。

5. 顔のバランスの変化

顎が発達しないと顔全体が平坦な印象になり、立体感のない顔貌になることがあります。

6. 健康への影響

咀嚼不足により、唾液の分泌が減少し、口腔内の健康や消化機能に悪影響を及ぼす可能性があります。

よく噛むことのメリット

硬いものを噛むことだけでなく、よく噛むこと自体に多くのメリットがあります。

  1. 消化促進・・食べ物を細かく噛み砕くことで、消化がスムーズになります。
  2. 唾液分泌の増加・・よく噛むことで唾液の分泌が促進され、口腔内の健康維持に役立ちます。
  3. 満腹感の向上・・ゆっくり噛むことで満腹中枢が刺激され、過食を防ぎます。

良く噛む習慣を作るには?

良く噛む

毎日の食事で良く噛む習慣を作っていくためには、どのようにすれば良いのでしょうか? ポイントは以下の通りです。

  • 様々な食材を摂取する・・硬さの異なる食材をバランスよく食べることで、咀嚼機能を鍛えます。
  • 一口ごとにしっかり噛む・・一口30回を目安に噛むことで、消化や満腹感に良い影響を与えます。
  • 食事の環境を整える・・落ち着いた環境で食事をすることで、しっかりと噛む習慣が身につきます。

硬いものを食べすぎる事への注意

硬い物を食べた

硬いものを無理に噛むことは、歯や顎に負担をかける可能性があります。特に以下の点に注意が必要です。

  • 歯の損傷・・過度に硬い食べ物は、歯が欠けたり、ひびが入る原因となります。
  • 顎関節への負担・・硬いものを噛み続けることで、顎関節に負担がかかり、痛みや違和感を引き起こすことがあります。

適度な硬さの食材を選び、無理のない範囲で噛むようにしましょう。

まとめ

硬いものを噛むことは、咀嚼筋の発達や骨密度の向上など、顎や口腔の健康に良い影響を与えて適度な成長を促します。日常的に様々な食材をよく噛む習慣を取り入れることで、お口の中の健康維持や全身の健康促進につながります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

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