歯医者さんに行く前に、歯磨きをしておられますか? 特に定期健診の時には「クリーニングしてもらうから、歯磨きは不要だろう」と考える方もおられるかもしれません。しかし、実際には事前の歯磨きが診療の質や効率に大きく影響することがあります。歯医者へ行く前に歯磨きをすることの重要性と、その理由についてご説明します。
目次
歯医者に行く前に歯磨きは必要なのか?
診察前に歯を磨いておくと口の中が清潔であるため、気持ちよく診察を受けられる一方、磨かないことで歯科医や歯科衛生士が本来確認したい歯垢の状態を見逃してしまうのではないかという懸念もあります。
一般的に、歯医者さんに行く前は軽く歯磨きをすることが推奨されます。特に食事をした後や歯の間に食べ物のカスが残っている場合は、診察前に取り除くことで、スムーズに診療を受けることが出来ます。また、口臭が気になる場合も、歯磨きをしておくことで不快感を軽減できます。
更に、健診の際には、歯科衛生士が歯垢を染め出しして、毎日の歯磨きの磨き残しのチェックを行いますので、歯磨きの後にどの程度磨き残しがあるのかわかるようにしておく必要があります。
歯磨きをすることで得られるメリット
診療の精度向上
歯磨きをしないで歯医者に行くと、食べ物のカスや歯垢が残ったままの状態で診察を受けることになります。この状態だと、歯や歯茎の状態が見えにくくなり、正確な診断が難しくなることがあります。特に虫歯や歯周病の診断には、歯や歯茎の状態を正確に把握することが必要ですので、軽く歯磨きをしてから受診しましょう。
歯科医師の負担軽減
また、患者さんが事前に歯磨きをすることで、診療の効率も上がります。歯垢や食べ物のカスが少ない状態で診療を始めることができれば、歯科医師や衛生士はより早く、正確に歯や歯茎の状態を把握して治療に集中できます。歯医者側の負担を軽減し、患者さんにとってもスムーズな診療が可能となります。
歯磨きをしない場合のデメリット
歯医者さんに行く前に歯磨きをしない場合、次のようなデメリットがあります。
診察がスムーズに進まない可能性
食べ物のカスや汚れが残っていると、歯科医師や歯科衛生士が歯の状態を確認しにくくなるため、診察に時間がかかる場合があります。
口臭の原因になる
歯磨きを怠ることで、口臭が発生しやすくなり、診察中に不快な思いをすることがあります。
歯垢がたまりやすい場所の確認が難しい
特に定期健診やクリーニングの際、歯磨きをしていない状態だと、歯磨きの結果磨き残しになっている歯垢を正確に確認出来ない可能性があり、正確な診断や患者さんへのアドバイスが難しくなることがあります。
歯医者さんは歯垢をチェックするのか?
歯科医院では、診察の際に歯垢(プラーク)がどの程度たまっており、歯肉の健康状態はどうかなどを確認します。歯垢は歯の表面に蓄積された細菌の集合体であり、これが歯周病や虫歯の原因となります。
歯垢のチェックは定期健診では特に重要なステップであり、歯科医師が歯垢の状態を正確に確認するためにも、来院前に普段通りに歯磨きを行い、歯垢の状態がしっかりと確認できるようにすることが大切です。
定期健診でチェックするポイント
定期健診において歯科衛生士がチェックするポイントは、患者さんの口腔内の健康状態を総合的に評価し、早期に歯周病などの問題を発見するために重要です。主に以下の項目がチェックされます。
1. 歯垢と歯石の状態
歯垢(プラーク)は、虫歯や歯周病の原因となる細菌の塊です。歯磨きでは取り切れない歯垢が溜まり、歯石になると、硬くなって歯ブラシでは除去出来なくなります。歯科衛生士は、歯や歯茎に付着した歯垢や歯石の有無、場所、量を確認し、必要に応じてクリーニングを行います。
2. 歯周ポケットの深さ
歯周病の進行具合を判断するために、歯と歯茎の間にある「歯周ポケット」の深さを測定します。通常、健康な歯茎では歯周ポケットの深さは1〜2mm程度ですが、深さが3mm以上になると歯周病の兆候があるとされます。この測定によって歯周病の進行度合いやリスクを評価し、必要に応じて歯周病治療を行います。
3. 歯茎の状態
歯茎の色や腫れ、出血の有無も重要なチェックポイントです。健康な歯茎は淡いピンク色ですが、歯周病が進行している場合、赤く腫れたり、歯磨きや触診で出血することがあります。こうした状態を確認し、早期に適切な処置を行うための指標となります。
4. 歯の動揺
歯がグラグラしていないか調べることも重要です。歯周病になって歯周組織が壊されると、歯槽骨が歯を支えられなくなり、歯がグラグラしてきます。そのような兆候がないかどうかをチェックすることも大切です。
5. 虫歯の有無
歯の表面や隙間、歯と詰め物や被せ物の境目など、虫歯が発生しやすい箇所を重点的にチェックします。初期の虫歯は痛みがなく、見た目でもわかりにくいため、定期的なプロのチェックが重要です。
6. 噛み合わせや歯並びの異常
噛み合わせが悪いと、特定の歯や顎に過剰な負担がかかり、歯や顎関節に問題が生じることがあります。また、歯並びが悪いと歯磨きがしにくいため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。健診ではこれらの噛み合わせや歯並びの異常も確認し、矯正治療などの必要性を判断します。
7. 口臭や唾液の状態
口臭の原因として考えられるのは、虫歯や歯周病、歯垢の蓄積、舌苔(ぜったい)の存在などです。また、唾液の量や質も重要で、唾液が少ないと口内環境が悪化し、虫歯や歯周病のリスクが高まります。歯科衛生士は、こうした口臭や唾液の状態も確認し、適切な対策を提案します。
8. 詰め物や被せ物の状態
既存の詰め物や被せ物がしっかりと歯に密着しているか、また劣化や割れや欠けなどがないかも確認します。隙間ができていると、そこに歯垢が溜まり、二次的な虫歯の原因となるため、定期的なチェックが重要になります。
定期健診では、これらの項目を総合的に確認し、患者さんのお口の健康状態を維持するための指導や治療が行われます。
歯垢が残っていると診療にどう影響するか
歯垢が残ったままだと、診療の際に歯科医師が本来確認すべき部分が見えにくくなります。例えば、虫歯の初期段階や歯周病の症状が歯垢に隠れてしまい、すぐに適切な治療を行えなくなることがあります。また、歯垢が残っていると、口内環境が悪化している可能性があり、治療の進行を遅らせる原因にもなります。
歯医者でクリーニングを受けるからといって歯磨きを省略しない理由
「どうせクリーニングで歯垢を取ってもらうから事前に歯磨きをしなくてもいい」という考え方は、適切ではありません。クリーニングでは専用の器械を使って口内を徹底的に清掃しますが、その前に自分でできる範囲でのケアをすることが大切です。
歯垢をある程度取り除いた状態でクリーニングを受けると、より深いところまで清掃が行き届き、診療の質が向上します。
まとめ
歯科を受診する前の歯磨きは、診療の質を高めるための準備です。歯垢や食べ物のカスを事前に取り除くことで、歯科医師や歯科衛生士が正確に診断・治療を行いやすくなり、患者さん自身も快適に診療を受けられる環境を作り出します。次回の歯医者訪問の際は、ぜひ軽く歯磨きをしてから受診することをおすすめします。