歯がズキズキ痛むのに歯医者で診てもらうと「悪い部分はありません」と言われる場合があります。この場合は、歯にひびが入っているのがレントゲンや肉眼ではわからず、歯科医師が見逃してしまっているケースもありますので、ご説明します。
目次
原因不明の歯の痛みとは?
歯の痛みを訴える患者さんの中には、虫歯や歯周病といった明確な原因が見つからないケースがあります。こうした「原因不明」の痛みは、特に歯の破折によるものが隠れている場合があります。
このような痛みは、初期段階では以下のような特徴を持つことがあります。
- 噛むと特定の歯だけが痛む
- 冷たいものや温かいものがしみるが、一時的である
- 痛みが周期的で、不快感が長続きしない
痛みのパターンがはっきりしないため、診断が難しいことも多く、患者さんが複数の歯科医院を受診することも少なくありません。
原因不明の歯の痛みの診断方法
原因不明の歯の痛みを診断するためには、専門的な検査が必要です。以下の方法を用いて診断が行われます。
視診
歯科医師が亀裂の有無を確認する際、特別な染色液を使用することがあります。また、歯科用のプローブを用いて歯の表面を調べることも重要です。
X線撮影
通常のX線写真では破折の検出が難しい場合がありますが、CTスキャンを用いることで亀裂の位置や深さをより正確に把握できます。
咬合テスト
噛む際の痛みの有無を確認する
診断におけるポイント
- 患者さんの痛みの訴えを詳しく聞くこと。
- 咬合力をチェックすることで問題のある歯を特定する。
視診でもX線でも痛みの原因がわからない場合は、詰め物や被せ物を外してみてやっと歯にひびが入っているのがわかり、痛みの原因が判明する場合もあります。
歯の破折が原因となるケース
歯の破折とは、歯が小さな亀裂や割れ目を生じる状態を指します。この状態が痛みの原因となる理由には以下があります。
- 破折部から細菌が侵入し、歯髄や周囲の組織が炎症を起こす。
- 噛む際の力が亀裂部分に集中し、神経を刺激する。
歯の破折の主な原因には以下があげられます。
- 強い噛みしめや歯ぎしり
- 硬いもの(氷や骨)を噛む習慣
- 加齢による歯の構造の弱体化
- 過去の治療で装着された詰め物や被せ物の劣化
症状が曖昧なため、歯科医師でも見逃しやすい問題ですが、放置すると状態が悪化し、最終的に抜歯が必要になることもあります。
歯の破折とは?
歯の破折とは、歯がひび割れたり、折れたりする状態を指します。歯の構造は硬いエナメル質と、その内部にある柔らかい象牙質、そして神経と血管が通っている歯髄から成り立っています。
詰め物の周囲に細かいひびが入ることはありますが、その程度では痛みは起こりません。大きなひび割れや、深いひび割れ、大きく折れた場合には強い痛みが起こります。
歯の破折が起こりやすい状況とは
歯の破折が起こるリスクが高いのは、以下のような条件です:
加齢や生活習慣
年齢を重ねると歯のエナメル質が摩耗し、内部の象牙質が露出しやすくなるため、亀裂が入りやすくなります。
詰め物や被せ物のある歯
修復物が過剰な力を受け止めきれない場合、周囲の歯が破折するリスクが高まります。
歯ぎしりや食いしばり
就寝中の無意識な力が歯に負担をかけ、亀裂の原因となることがあります。
歯の破折が原因で起こる痛みの特徴
歯の破折による痛みは、他の歯の問題とは異なる特徴を持っています。
- 断続的な痛み
- 噛むと痛む
- 温度によって刺激を受ける
- 持続的な鈍痛
- 見た目に現れない痛み
- 感染のリスク
1. 断続的な痛み
歯の破折が原因で起こる痛みは、断続的に現れることが多いです。
- 食事中・噛む際に圧力がかかることで痛みが増す
- 飲食後・・冷たい飲み物や温かい食べ物を飲食した後に痛む
- 就寝中・・夜間、特に噛み締める癖がある場合に痛みが出やすい
2. 噛むと痛む
歯の破折がある場合、噛む行為そのものが痛みを引き起こします。これは、破折部分に圧力がかかることで内部の神経が刺激されるためです。痛みの程度は破折の程度によって変わります。
- 軽度の破折・・噛むと一瞬の鋭い痛みを感じることがある
- 中等度の破折・・噛むたびに強い痛みが走る
- 重度の破折・・常に痛みがあり、噛むことができないほどの痛みを伴う
3. 温度によって刺激を受ける
歯の破折があると、冷たいものや熱いものに対して敏感になります。これは、破折部分から温度の刺激が神経に直接伝わるためです。
- 冷たいもの・・氷や冷たい飲み物を口にすると鋭い痛みが走る
- 熱いもの・・熱いスープやコーヒーを飲むときに痛みを感じる
- 温度変化・・冷たいものから熱いものへ、またはその逆の温度変化のある食べ物で痛みが悪化することがある
4. 持続的な鈍痛
歯の破折が進行すると、持続的な鈍痛を感じることがあります。この痛みは、常に存在するものではなく、次のような状況で激しくなることがあります。
- 休息時の痛み・・何もしていない時やリラックスしている時に突然痛みが現れる
- 圧力の変化・・飛行機に乗ったり、高度が変わるときに痛みが増すことがある
5. 見た目に現れない痛み
破折が小さい場合、肉眼では全くわからないことがあります。しかし、次のような微妙な症状が現れることがあります。
- 色の変化・・破折部分が変色することがある
- 噛み合わせの違和感・・噛んだ時に違和感を感じる
- 微妙なひび割れ・・表面に小さなひびが見えることがある
6. 感染のリスク
破折があると、破折部分から細菌が侵入しやすくなり、感染を引き起こすことがあります。この場合、次のような症状が現れます。
- 腫れ・・破折部分周辺の歯茎が腫れる
- 膿・・感染が進行すると膿が出ることがある
- 発熱・感染が広がると体全体に影響し、発熱することがある
歯の破折の治療方法
歯の破折の治療は、破折の程度や位置によって異なります。以下に、一般的な治療方法を紹介します。
- コンポジットレジン充填・・小さなひび割れに対して使用
- 被せ物・・広い範囲の破折を修復する
- 根幹治療・・歯髄が感染している場合に神経を抜く治療を行う
- 抜歯・・修復が不可能な場合は抜歯になる。その後、ブリッジ、入れ歯、インプラントのどれかで見た目と機能を補う必要がある
歯の破折に対する治療法は、亀裂の深さや位置によって異なります。
浅い亀裂の場合
- 特殊な接着剤での修復。
- 痛みが軽減する場合は経過観察。
深い亀裂の場合
- 歯髄が露出している場合は、根管治療の後、被せ物で補強する。
- 亀裂が歯根に及んでいる場合は、抜歯後にインプラントを選択することもあります。
予防策とセルフケアの方法
破折を予防するためには、毎日のセルフケアが大切です。
- 正しい方法でのセルフケア・・歯ブラシの選び方と正しい磨き方
- 定期健診・・歯医者での定期的なチェックとクリーニング
- マウスガードの使用・・スポーツや歯ぎしりの衝撃から歯を守る
- 硬い食べ物の摂取を避ける・・破折リスクを減少させる
原因不明の痛みを見逃さないために
原因不明の歯の痛みを放置すると、日常生活に支障をきたすだけでなく、重篤な状態を招く可能性があります。そのため、以下を心がけることが重要です:
定期健診の重要性
痛みがなくても、定期的に歯科医師に診てもらうことで、破折のリスクを早期に察知できます。
痛みを軽視しない
痛みが一時的であっても、原因を突き止めることが長期的な健康維持につながります。
まとめ
原因不明の歯の痛みが続く場合、その原因として歯の破折が考えられます。歯医者でもわかりにくいパターンもありますので、クリニックで「異常はありません」と言われても、実際に痛みがある場合は、痛みが発生する場所や痛みの程度、どのような場合に痛むか等の特徴を伝えて、しっかり調べてもらいましょう。