過剰歯とは、通常よりも多くの歯が生えてしまう状態で、30〜40人に1人の割合で見られます。過剰歯は歯並びや噛み合わせに影響を及ぼし、放置すると虫歯や歯周病のリスクが高まります。過剰歯の原因や種類、もたらす影響、治療方法、適切な対応の重要性をご説明します。
過剰歯の原因
過剰歯は通常よりも多くの永久歯または乳歯が生える状態のことをいいます。過剰歯が起こる原因は様々で、原因が不明とされる場合もありますが、一般的に下記のような原因があるとされています。
1. 遺伝によるもの
遺伝が過剰歯の発生に大きく関与していると考えられています。過剰歯は、家族内で同じような歯の異常が見られるケースが多く、遺伝的な要因が強く関わっている可能性があります。親や祖父母が過剰歯を持っていた場合、子供にも同じ傾向が見られることがあります。
2. 歯が生える過程での異常によるもの
歯の発生段階における異常が過剰歯を引き起こすと考えられています。通常、歯胚(歯の基となる組織)が適切な数で形成されますが、何らかの原因で歯胚が余分に形成されたり、分裂したりすることで、過剰歯が発生します。
3. 疾患や症候群によるもの
特定の疾患や症候群と過剰歯の発生が関連している場合があります。
歯が形成される流れ
過剰歯を説明するために、歯が形成される一般的な流れをご紹介します。
- 胎生7~10週目の間に上皮細胞が増加して内部へ入り、乳歯の卵というべき歯胚が形成
- 胎生3ヶ月半を過ぎると、永久歯の歯胚も形成
- 数年かけて歯槽骨の中で発育し、歯として萌出
歯胚の段階で二つに分裂したり、余分にできてしまうことで過剰歯が生えてきます。とはいえ、なぜ歯胚がそのような異常を起こすのかは、いまだに解明されておりません。過剰歯は遺伝も少なからず影響があるのではと言われますが、原因は不明です。
過剰歯とは
定期健診やフッ素塗布でお子さんと小児歯科へ通院した際に、過剰歯があると言われて、すぐにどんな状態かわかるパパやママは少ないでしょう。過剰歯という漢字が示す通り、過剰な歯が生えている状態で、学校の歯科検診では発見しづらいものです。
歯の本数
通常の方の歯の本数をご案内します。
- 乳歯の場合 20本
- 永久歯の場合 28~32本
これらの本数の範囲より多く生えている歯を過剰歯と専門的に呼びます。永久歯に4本差があるのは、親知らずも含めた範囲で、生えてくる人生えてこない人がいるためです。
女性より男性に多く見られますが、おおよそ30~40人に1人の割合でいるケースがあり、そこまで珍しくはありません。1本のみ過剰歯という方もいれば、複数の過剰歯の本数を抱える方もいて、過剰歯の本数はまちまちです。過剰歯にも様々な生え方があります。
過剰歯の種類について
過剰歯を分類すると、順正と逆性という二つの種類に分かれます。お口の中で正常な歯と同じように生えてくるのが順正、正常な歯と反対向きに生えるのが逆性です。
- 順正過剰歯 口の内側に向かって生える
- 逆性過剰歯 口の内側から遠ざかって生える
- 正中過剰歯 上の前歯の間・上の前歯の裏側から生える
- 水平埋伏歯 真横を向いて生える
過剰歯の形は、正常の歯と何ら変わりがない歯、小さくとがった歯、大きな歯など形状は様々です。
過剰歯がもたらす影響
過剰歯は、歯列に影響を及ぼす可能性があるため、早期発見と適切な対応が重要です。
歯列の乱れ
過剰歯が存在すると、隣接する歯の正常な萌出を妨げ、歯並びが乱れる原因となります。特に、前歯付近に過剰歯がある場合は、審美的な問題が生じることが多いです。
噛み合わせの問題
過剰歯が噛み合わせに影響を与える場合、顎関節症や食べ物がうまく咀嚼できないといった問題が発生することがあります。
虫歯や歯周病のリスク増加
過剰歯が存在することで、歯列が複雑になり、清掃が難しくなることがあります。その結果、歯垢が溜まりやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
過剰歯の治療について
本数が多いだけならば、過剰歯は放置しておいても大丈夫なのではと思うかもしれません。基本的には子供の時にわかることが多いですが、過剰歯は放っておいてはいけません。顎のスペースは限られているのに、通常の本数より歯が多いと、正常な歯が生える位置がありません。そのため、このようなトラブルが起きやすくなります。
過剰歯の治療方法
過剰歯の治療は、位置や影響によって異なります。治療の決定には、歯科医師による精密な診断が必要です。
経過観察
過剰歯が歯列や口腔機能に影響を与えない場合は、定期的に経過を観察し、問題が生じた時点で治療を行うこともあります。
抜歯
過剰歯が歯列に影響を与える場合や、正常な歯の成長を妨げている場合は、抜歯が推奨されます。特に、歯列矯正が必要なケースでは、過剰歯を抜くことで矯正治療がスムーズに進むことがあります。
過剰歯により起こりやすいトラブル
- 違う部分から生えてきて歯並びや噛み合わせが悪くなる
- 永久歯が生えてこない
- 過剰歯の周囲に嚢胞ができ、永久歯の歯根を溶かす
- むし歯が出来、その下の歯肉に過剰歯が埋まっていると細菌感染のリスクが高い
- 鼻腔に過剰歯が動き大きく成長するため、鼻血や蓄膿症の原因になる
過剰歯を治療すべき時期
過剰歯がどの種類なのかということが重要です。また、どのケースが一番より良いかは、レントゲン検査で過剰歯と診断された場合は、小児歯科の歯科医師の判断を仰ぐべきですが、一般的にはこのような対処が多いです。
- 順正過剰歯の場合は経過を観察し、歯茎から生える時期を待って抜く
- 逆性過剰歯が骨の奥に位置し、近くの歯に影響を与える心配がなければ様子を見る
- 歯に大きな影響を与える場合は抜く必要がある
- 鼻腔に伸びて悪影響を及ぼす場合、耳鼻科や口腔外科で連携して手術
大人になってから過剰歯が判明した場合は、抜歯後に歯列矯正を行わなければならない可能性があります。
予防と早期発見の重要性
過剰歯は、レントゲン撮影などで早期に発見されることが多いため、定期的な歯科検診が重要です。過剰歯が早期に発見されれば、歯列矯正などの治療をスムーズに行うことができ、将来的な問題を回避できる可能性が高まります。
まとめ
過剰歯は遺伝や歯の形成異常などさまざまな要因で発生し、歯列や口腔の健康に影響を及ぼす可能性があります。特に歯列矯正が必要な場合や、隣接する歯に影響を与える場合は、抜歯などの早期治療が重要です。
定期的な歯科検診を受けることで、過剰歯を早期に発見し、適切な治療を進めることができます。子供やご自身の歯を守るために、日常のケアとともに専門的な診断を活用しましょう。