よくあるご質問
歯並び・歯列矯正

歯列矯正の治療の流れ

まつもと歯科 理事長・総院長 松本 正洋

今回は「歯列矯正の治療の流れ」について書いていきたいと思います。

歯列矯正の治療の流れ

ワイヤー矯正

初回〜歯列矯正が終わるまでのおおまかな流れは以下のようなものです。

①初診(1回目)

②さまざまな検査

③治療方針の決定

矯正装置が入る

⑤毎月の調整

⑥治療が終了し矯正装置が外れる

⑦後戻りを防ぐための保定期間

治療終了

以上のようになります。

【歯列矯正の流れ①】初診(1回目)

歯列矯正の初診(1回目)は非常に重要で、患者さんの状態を把握し、最適な治療計画を立てるための最初のステップとなります。

初診ではまず、患者さんのご希望やお悩みを詳しく伺うためのカウンセリングが行われます。具体的には以下の内容が含まれます。

  • 治療の動機・・歯並びや咬み合わせに対する具体的なお悩みやご希望。
  • 過去の歯科治療歴・・過去に行った歯科治療の内容や現在の歯の状態。
  • 健康状態・・全身の健康状態や現在服用している薬、アレルギーなど。

どこを治したいか、どこの歯並びが気になっているのか、心配なことや不安なこともこの段階から相談できます。おおまかにですが、全体でかかる予算や費用も、ここで出してもらえるでしょう。歯列矯正治療は基本的に保険外(保険がきかない)となります。

【歯列矯正の流れ②】さまざまな検査

治療前にはさまざまな検査を行います。

歯列矯正をすると決まったら、

✔︎お1人お1人にしっかり合った矯正装置を作るため

✔︎今後の治療方針を決める際の参考にするため

✔︎歯の動きや顔貌の変化を記録に残すため

などの理由から、さまざまな検査を行っていきます。

【歯列矯正の流れ③】治療方針の決定

検査で得た結果をもとにどの装置がベストか、治療期間はどれくらいかかるかなど歯科医師が治療計画を立てます。その後患者さんと話し合った上で、治療方針を決定し治療に入っていきます。

抜歯が必要になった場合は、矯正装置が入るまでの間に、抜歯を行います

抜歯は歯が動くスペースを作るための小臼歯の抜歯と、必要に応じて親知らずの抜歯を行うこともあります。小臼歯の抜歯は当院で行うことが出来ます。

親知らずの抜歯が必要な場合、生え方の状態によっては、出血が多くあった場合などを考慮し、抜歯のための器材・環境が整っている病院の口腔外科で抜歯することをお勧めする場合もあります

【歯列矯正の流れ④】矯正装置が入る

抜歯が終わって1週間ほどすると傷口が治ってきます。その頃からいよいよ矯正装置を入れていきます。ワイヤー矯正や裏側矯正の装置を初めて歯に付ける場合は、少し時間がかかります。

ワイヤー矯正の装置が入った図

歯列矯正は、いわば硬い骨にしっかり埋まっている健康な歯をむりやり動かしていくので、装置を入れた直後数日間は痛みを感じるでしょう。場合によっては鎮痛剤を飲むこともあります。

痛みは数日間で治まってきます。これは段階に分けて歯を動かしていて、一定の位置まで歯が動いたらほとんど力はかからないからです。

骨に埋まっている歯を動かしていくので、治療後は痛むことが多い

【歯列矯正の流れ⑤】毎月の調整

ワイヤー矯正の毎月の調整は、治療の進行状況を確認し、必要な調整を行うための重要なプロセスです。以下に、毎月の調整で一般的に行われることをご説明します。

1. 歯の動きの確認

歯科医師は前回の調整からの歯の動きを確認します。これは、治療計画に沿って歯が正しく動いているかをチェックするために行います。

  • 視覚的な確認・・目視で歯の位置を確認します。
  • 歯型や写真との比較・・前回の歯型や口腔内写真と比較して歯の動きを評価します。

2. アーチワイヤーの調整または交換

アーチワイヤーは歯を動かす力を生み出します。毎月の調整では以下のことを行います。

  • ワイヤーの調整・・ワイヤーの張りを調整し、歯にかかる力を適切に調整します。
  • ワイヤーの交換・・歯の動きに応じて、適切な太さや材質のワイヤーに交換します。治療の進行に伴い、ワイヤーは徐々に太く、硬くなることがあります。

3. ブラケットとバンドの確認

ブラケットやバンド(必要に応じて使用される装置)の状態を確認し、必要に応じて調整や再接着を行います。

  • ブラケットの位置調整・・必要に応じてブラケットの位置を微調整します。
  • ブラケットやバンドの交換・・損傷や摩耗がある場合は、新しいものに交換します。

4. ゴムバンド(エラスティック)の交換

エラスティック(小さなゴムバンド)は、特定の歯を特定の方向に引っ張るために使用されます。以下のことを行います。

  • エラスティックの交換・・使用しているエラスティックを新しいものに交換します。
  • 新しいエラスティックの指示・・必要に応じて、新しい配置や力を加えるためのエラスティックの使用方法を指示します。

5. 口腔内の清掃とケア

矯正装置が付いているため、口腔内をきれいに歯磨きすることが難しくなることがあります。毎月の調整では、歯のクリーニングが行われます。

  • 歯のクリーニング・・ブラケット周りのプラークや歯石を除去します。
  • フッ素塗布・・虫歯予防のためにフッ素を塗布することがあります。

6. 治療計画の確認と調整

治療の進行状況に応じて、治療計画を見直し、必要に応じて調整します。患者さんのお口の状態に応じて、以下の調整を行います。

  • 治療の進行状況の評価・・現在の進捗が治療計画と一致しているか確認します。
  • 治療計画の修正・・必要に応じて、治療計画を修正し、次回の調整内容を決定します。

7. 患者さんへの指導

毎月の調整後、患者さんに対して以下の指導を行う場合があります。

  • ホームケアのアドバイス・・矯正中の歯磨きの方法や注意点について説明します。
  • 装置の取り扱い方法・・エラスティックやその他の装置の使用方法や注意点を指示します。

毎月の調整は、矯正治療を順調に進め、計画通りに歯を移動させるために重要なプロセスです。患者さんとのコミュニケーションを大切にし、適切なケアと指導を行うことが、治療の成功に繋がります。

【歯列矯正の流れ⑥】治療が終わり矯正装置が外れる

⑤の毎月の調整を続け、しっかり歯並びが治ったと歯科医師が判断すれば、矯正装置が外れます。元の歯並びの状態にもよりますが、矯正装置を入れてから外れるまでは概ね1〜3年ほどでしょう。私は中学1年生頃から歯列矯正を始め、実際に装置が外れたのは高校2年生でした。少し長めの4年間かかりました

矯正装置を入れてから外れるまでの年数は概ね1〜3年

【歯列矯正の流れ⑦】後戻りを防ぐための保定期間

矯正装置が外れてからは、歯並びがまた戻ってしまわないよう「リテーナー」というマウスピースをつけて保定します。今までは矯正装置が歯を動かし、戻らないよう固定してくれていましたが、それが外れた今は後戻りしやすい状況にあるからです

リテーナー

この「リテーナー」は矯正装置と違い、着脱式です。そのため患者さん自身の頑張り次第で結果が大きく変わってきます。矯正装置が外れた直後は、食事中以外は1日中リテーナーをつけていなければなりません。いずれは就寝中だけなど、つけているべき時間は徐々に短くなっていきます。

このリテーナーによる保定期間は、矯正装置をつけていた期間と同じくらいかそれ以上が一般的です。その間も、定期的に歯科医院に通い経過観察をしていきます。

つまり1〜3年以上はまだかかるということ。矯正治療は歯医者との長い付き合いになります。

【歯列矯正の流れ⑧】治療終了

保定の必要ももうないと判断されれば、歯列矯正治療は完全に終了となります。

歯列矯正にかかる費用

 

豚のオブジェ

歯科矯正は、矯正装置が入ってからも、歯の動きに合わせて適宜装置を調整していきます。おおむね月1回は調整のために歯科医院に行かなければいけません(一般的なワイヤー矯正の場合)

また、矯正装置が入っていると歯磨きはとても難しいです。歯科矯正中は、歯磨きに対してかなりの意識・技術が高くない限りは、自分だけで完璧に清掃するのは困難です。そのため、毎回歯科医院へ行った時には、歯科衛生士にしっかりとクリーニングをしてもらうのが通例です(矯正装置や歯科医院にもよります)。

加えて、歯科矯正が一通り終わって矯正装置が外れる日がくると、リテーナーというマウスピースをもらえます。きれいに並んだ歯並びがまた悪く戻ってしまうのを防ぐためです。

以上のように、歯科矯正は初期費用だけではなくさまざまな場面で費用がかかります。歯科矯正にかかるトータル費用の平均は、10〜150万円程度と開きがあります。歯科矯正の方法や、装置の種類、歯科医院によって大きく変わってくるためです。

歯列矯正ではどこの歯を抜く?

 

歯列矯正にともなう抜歯と聞いて、気になるのはどこの歯を抜くのかということではないでしょうか。。

第一小臼歯と第二小臼歯

歯列矯正にともなう抜歯は、上図赤丸の歯のいずれかであることが多いです。私が実際に抜歯をしたのは、上下左右の第一小臼歯4本でした。抜歯によってできた隙間を使って、歯並びをきれいに整えていくというイメージです。

上図に加えて、通常の本数よりも過剰に生えている歯(過剰歯)があったり、虫歯や歯周病等によって状態の悪い歯があれば同時に抜歯することも考えられます。

歯列矯正の流れに関するQ&A

歯列矯正のための検査は何のために行われますか?

検査は、患者一人ひとりに合った矯正装置を作るため、治療方針を決める参考にするため、歯の動きや顔貌の変化を記録に残すために行われます。

歯列矯正中の毎月の調整では何を行いますか?

調整は主にワイヤー矯正に対して行われます。毎月の調整では歯の動きや状態に合わせて調整が行われ、力のかかる方向や加減が変わります。また、歯科衛生士による口腔内のクリーニングが行われることもあります。

矯正が終了して装置を外した後はどのように保護しますか?

矯正装置が外した後は「リテーナー」というマウスピースをつけて歯並びが戻らないように保定します。リテーナーは着脱式で、食事中以外は1日中つけることが推奨されています。

まとめ

歯のキャラクター

歯列矯正の治療は以下のステップに分かれます。

矯正初診相談で希望や予算を相談し、検査で患者さん毎の治療計画を作成します。矯正治療のための便宜抜歯が必要な場合は事前に行われ、通常は第一小臼歯や第二小臼歯を抜歯します。歯に矯正装置取り付けた後、歯の移動が始まります。

ワイヤー矯正の場合は毎月調整が行われ、虫歯や歯周病を予防するためのクリーニングも必要になります。矯正装置は1~3年後に歯並びがきれいな状態になれば外すことが出来、その後は後戻り防止のためにリテーナーをつけます。

抜歯は通常第一小臼歯や第二小臼歯で行われ、悪状態の歯も抜歯の対象となることがあります。

この記事の監修者
医療法人真摯会 まつもと歯科
理事長 歯科医師 総院長 松本正洋
1989年国立長崎大学歯学部卒業。1989年歯科医師免許取得。1998年医療法人真摯会設立。日本抗加齢医学会 認定医。日本歯周病学会。

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