
歯ぎしりは、睡眠中や日中に無意識のうちに起こります。歯ぎしりを放置すると、歯の摩耗や顎関節症、頭痛など、長期的なリスクが高まる可能性があります。歯ぎしりの主な原因や対策方法、歯や顎を守るための方法をご説明します。
歯ぎしりをしてしまう理由

代表的な歯ぎしりの理由・原因をご紹介します。
歯ぎしりの原因は、医学的にははっきりとわかっていないため、歯ぎしりの原因と一般的にいわれているものについてご説明します。
1. ストレス
歯ぎしりの原因・理由として最も多いと言われているのがストレスです。仕事中など、日中起きているときにストレスを感じると食いしばったり歯ぎしりをしていませんか?歯ぎしりがストレス解消法になっていることもあるようです。これらは歯への負担が重く、注意が必要です。
またストレスだけでなく、物事に過度に集中することで歯ぎしりが起こることもあります。仕事中だけでなく、スマホやテレビ、ゲームや本などに集中している時に、歯を食いしばっていませんか?
食事の時以外は、上下の奥歯は離れているのが普通です。上下の奥歯が触れたり、噛んでいるのに気づいたら、離すように気をつけましょう。
- 仕事のプレッシャーや対人関係の緊張が、日中の歯ぎしりや夜間の無意識な歯ぎしりに影響を与えることがある。
- 睡眠の質の低下もストレスの一因となり、歯ぎしりを引き起こしやすくなる。
- 家族関係や介護も大きなストレスになっている場合があります。
2. 飲酒・喫煙
飲酒や喫煙が直接的に歯ぎしりの理由になっているのではありません。お酒の飲みすぎは睡眠の質を下げます。またタバコには覚醒作用があるのでこちらも睡眠の質を下げます。つまり飲酒や喫煙により睡眠が浅くなり歯ぎしりにつながっている可能性があります。
コーヒーなどに含まれるカフェインにも覚醒作用があるので、寝ている間の歯ぎしりにつながる可能性があります。
カフェインやアルコールの影響
生活習慣も歯ぎしりの引き金となります。特に次のような行動が影響を与えます:
- カフェイン(コーヒーやエナジードリンク)の過剰摂取。
- 就寝前のお酒の飲み過ぎ。
これらは、睡眠の質を低下させるだけでなく、体を興奮状態にするため、歯ぎしりを助長する可能性があります。
3. 噛み合わせ・歯並び
歯並びが悪いことでかみ合わせが安定せず、ストレスにつながり歯ぎしりの理由となっていることがあります。
- 不正咬合(噛み合わせの異常)がある場合、上下の歯が不自然に接触するため、歯ぎしりが生じることがあります。
- 噛み合わせが悪いと、自然な位置で噛むことが難しく、歯や顎に負担がかかります。
歯ぎしりは、不正咬合(噛み合わせの問題)が関係していることがあります。不正咬合の例として、次のような問題があります。
- 上下の歯が自然に噛み合わない。
- 歯並びが乱れている。
- 詰め物や被せ物が適切に調整されていない。
これにより、顎に余計な力がかかり、歯ぎしりを引き起こすことがあります。
4. 薬の副作用
うつ病の薬が、寝ている間の歯ぎしりの原因・理由になっていることもあります。歯ぎしりにより頭痛など悪い影響が出ている場合は、担当の医師に相談してみましょう。
5. 逆流性食道炎など
逆流性食道炎や睡眠時無呼吸症候群なども、歯ぎしりの原因・理由として挙げられています。
- 呼吸が妨げられると、無意識に顎の筋肉が過剰に動き、歯ぎしりが発生することがあります。
睡眠関連の要因
睡眠時無呼吸症候群やいびきなど、呼吸に問題がある場合も歯ぎしりの原因となります。以下のような状況が考えられます:
- 睡眠中に呼吸が止まり、無意識に顎を動かすことで歯ぎしりが起こる。
- 鼻づまりやアレルギーによる呼吸困難が影響する。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
無呼吸状態が歯ぎしりを誘発する可能性があるため、睡眠の質や健康全般に悪影響を及ぼす場合があります。呼吸が一時的に止まることで、脳が無意識に歯ぎしりを促すことがあります。無呼吸症候群が疑われる場合は、睡眠専門医との連携が重要です。
6. 遺伝的要因
歯ぎしりには遺伝的な要因もあることが知られています。家族に歯ぎしりの傾向がある場合、患者さんご自身にも同じ症状が出る可能性があります。
- 歯ぎしりには遺伝的な影響も考えられています。
- 家族に歯ぎしりの習慣がある場合、その傾向が引き継がれることがあります。
歯ぎしりには、家族歴や遺伝が関係している場合もあります。また、日中に無意識に歯を噛み締める習慣がある場合、それが夜間の歯ぎしりにもつながることがあります。
歯ぎしりをやめるには

残念ながら歯ぎしりをやめる直接的な方法はありません。そのため歯ぎしりに対しては対症療法となりますが、歯科医院でマウスピースを作ってもらったり、原因となっているストレスに対処することなどがあげられます。
1. 専門的な治療(マウスピースや矯正治療)
歯ぎしりによるダメージを防ぐためには、歯科医院で以下のような治療を受けることが推奨されます。
- ナイトガードの使用・・睡眠中に装着することで、歯と歯が直接接触するのを防ぎます。
- 噛み合わせの調整・・不正咬合が原因の場合、被せ物や詰め物の再調整、矯正治療が必要になることがあります。
2. ストレスの管理
ストレスは歯ぎしりの大きな要因となるため、リラクゼーションやストレス管理が重要です。具体的には以下の方法があります。
- 深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション法を取り入れる。
- 十分な睡眠時間を確保し、睡眠環境を整える。
- 趣味や運動を通じてストレスを発散する。
3. 睡眠習慣の改善
歯ぎしりを軽減するためには、良質な睡眠を確保することが大切です。以下のポイントを意識しましょう。
- 就寝前のカフェインやアルコールの摂取を控える。
- 寝室の環境を静かで暗く保ち、適切な温度にする。
- 規則正しい睡眠スケジュールを守る。
4. 日中の癖を見直す
日中に無意識に歯を噛み締める習慣がある場合、それを意識的にやめることが歯ぎしりの予防につながります。以下のような工夫をしてみてください。
- 顎をリラックスさせる練習を行う。
- 定期的に口を軽く開け、歯が接触しないように意識する。
5. 医師の診断を受ける
歯ぎしりが睡眠時無呼吸症候群や他の健康問題と関連している場合、専門医の診断が必要です。適切な治療を受けることで、歯ぎしりの根本的な原因を解消できる可能性があります。
歯ぎしりが引き起こすリスクと影響
1. 歯や歯周組織へのダメージ
- 歯ぎしりの繰り返しによって、歯の表面(エナメル質)が削られ、歯が弱くなります。
- 歯が割れたり、欠けたりすることがあります。
- 歯の神経が露出し、感覚過敏や痛みを引き起こすことがあります。
2. 顎関節の問題
顎関節症とは、顎の関節や周囲の筋肉に問題が生じる状態です。歯ぎしりによって以下の症状が発生することがあります:
- 顎の痛みや不快感。
- 口を開けたり閉じたりするときの「カクカク」という音。
- 顎の動きの制限や疲労感。
3. 頭痛や肩こり
歯ぎしりが続くと、顎周辺の筋肉に過度な緊張が生じ、それが頭痛や肩こりにつながることがあります。特に以下のような症状が現れることがあります:
- 朝起きたときのこめかみの痛み。
- 首や肩の筋肉のこわばり。
4. 歯周病の悪化
歯ぎしりは歯周病の進行を早める原因となります。歯周組織への圧力が増加し、歯ぐきや骨に悪影響を与える可能性があります。
歯ぎしりから歯を守るナイトガードとは?
まず、歯科医院でナイトガードと呼ばれる歯ぎしり用のマウスピースを作ってもらい、就寝中に使用します。ナイトガードは透明な歯科用プラスチックで出来たマウスピースで、眠っている間の無意識下での食いしばりや歯ぎしりから歯を守ります。マウスピースによって歯ぎしりをすぐなくすことは難しいですが、歯への負担を減らすために使用します。
覚えておきたいのは、このマウスピースで歯ぎしり自体を治せるわけではありません。歯ぎしりによる歯への負担を軽減するのがマウスピースです。歯ぎしり自体を根本的に治すには、歯ぎしりをしてしまう原因(ストレスなど)を解決しなければいけません。
まとめ

歯ぎしりは無意識に起こるもので、さまざまな要因が絡み合って起こるため、完全にやめることは難しいかもしれません。しかし、ストレスを軽減し、適切な治療を受けることで、歯や顎へのダメージを最小限に抑えることが可能です。
特に、ナイトガードの使用や日常生活での意識改革が効果的です。歯ぎしりを放置せず、早めに歯科医院で相談することで、健康な歯と快適な生活を維持しましょう。