
親知らずを抜歯した後には、出血の処置や食事制限、傷口のケアなど、術後に気をつけるべき点は多くあります。術後の過ごし方を誤ると、出血や感染、痛みが長引く原因になりかねません。親知らず抜歯後の注意事項を詳しく解説し、回復をスムーズに進めるためのポイントご説明します。
親知らず抜歯後の注意事項

1. 出血への対応
抜歯直後には軽い出血が数時間続くことがありますが、ガーゼを噛むことで止血が可能です。ガーゼを噛む際は、約30分間しっかりと圧力をかけ、血液が固まるのを助けます。血が止まらない場合や、大量の出血が続く場合は、すぐに歯科医に連絡しましょう。
出血を防ぐためにガーゼを噛む
- 抜歯後にガーゼを患部に当て、軽く噛むことで止血します。
- 目安時間は30~60分程度。ガーゼを交換する場合は、清潔なものを使用してください。
- 出血が長時間止まらない場合は、早めに歯科医に相談しましょう。
ポイント
- 口をすすぐのは避けましょう。血餅(血の塊)が取れると出血が再開する可能性があります。
- 血が止まらない場合はガーゼやティーバッグを噛むことが効果的です。
血餅とは
けっぺいと読みます。血餅は血の塊で、お口の中の傷に出来るかさぶたのようなものです。手や足のかさぶたと同じように、傷を覆って治癒を促すため、はがれてしまわないように注意が必要です。強くうがいをすると取れてしまい、治療が長引いたり、強い痛みが起こることがありますので、注意しましょう。
2. 麻酔が切れるまでは熱いもの、刺激物を口にしない
感覚が鈍麻しているので、火傷や傷を負っても気付きにくいためです。
3. 入浴、飲酒、運動など血流が良くなることをしない
術後すぐに激しい運動や体を動かすことは控え、できるだけ安静に過ごしましょう。運動や重労働を行うと、血圧が上がり出血が再発するリスクが高まります。抜歯当日はゆっくり過ごし、十分な休養を取ることが大切です。
運動や入浴の制限
- 抜歯後の数日間は、激しい運動や長時間の入浴を控え、安静を心がけてください。
- 血圧が上がることで出血や痛みが悪化することがあります。
ポイント
- 抜歯当日は仕事や学校を休むのが理想的です。
- 頭を高くして寝ると、出血や腫れを抑えることができます。
4. 冷やしすぎない
冷やすことは痛みを和らげるのに効果的ですが、冷やしすぎるとかえって治りが悪くなります。水道水で濡らしたタオルを当てる程度に留めておきましょう。
5. 抜歯部位の歯磨きは1週間程度避ける
傷口をまた開いてしまわないように、抜歯したとろの歯磨きは1週間ほど控えましょう。他の歯はいつも通り磨きます。近くに汚れが多くいると感染の原因となるためです。
6. 血が滲むからと何度もうがいをしない
傷口は血の塊ができることにより治ってきます。せっかくできた血の塊がうがいにより取れてしまうと、治りが悪くドライソケットの原因となります。ドライソケットは強い痛みを伴います。
強いうがいは控える
- 抜歯直後は血餅(血液の塊)が患部に形成される必要があります。これが治癒の第一歩です。
- 強いうがいや水流が強いシャワーでの口内洗浄は、血餅が取れる原因となるため避けましょう。
ドライソケットとは
強いうがいや、指や舌先などでこの部分を触ると、血餅や膜がとれてしまい、出血したり骨が露出してドライソケット(乾燥抜歯窩)になり、疼痛(とうつう)がおこったりします。
引用 コトバンク
7. 処方された化膿止めは全て飲み切る
痛み止めは日に日に使用量が減ってくると思いますが、抗炎症薬は痛みがなくても飲み切るようにしましょう。
痛み止め・抗生物質の服用
- 痛みがある場合は、処方された鎮痛剤を使用します。自己判断で市販薬を追加するのは控えましょう。
- 抗生物質を処方された場合は、指示通りに服用して感染を防ぎます。
8. 食事の注意
術後の数日間は、硬い食べ物や熱い食べ物を避け、やわらかい食事を摂るようにしましょう。噛む際に傷口に負担がかかると、痛みが増すだけでなく、傷口が開く可能性があります。
食事の注意点
- 抜歯後数時間は食事を控え、患部が安定するのを待ちます。
- 初日はやわらかい食べ物(例: おかゆ、スープ、ヨーグルト)を摂るようにしましょう。
- 刺激物(アルコール、辛い食べ物、硬い食べ物)は避け、治癒が進むまで控えてください。
おすすめの食事
お粥、スープ、ヨーグルト、プリンなどのやわらかくて冷たい食べ物。
避けるべき食事
熱い飲み物、硬いもの、スパイシーな食べ物。
9. 飲酒や喫煙を控える
術後の飲酒や喫煙は、治癒を遅らせるだけでなく、感染のリスクを高めます。特に喫煙は血管を収縮させ、血流を悪化させるため、治癒が遅くなる要因となります。少なくとも1週間は禁煙・禁酒することを推奨します。
喫煙・飲酒を控える
- 喫煙は患部の血流を悪化させ、治癒を遅らせる可能性があります。
- 飲酒は出血のリスクを高めるため、最低でも2~3日は控えることをおすすめします。
10. 腫れや内出血への対処
抜歯後、腫れや内出血が発生することがありますが、これは通常の反応です。
- 冷却法:初日の24時間は冷たいタオルや氷嚢で患部を冷やします。ただし、直接患部に当てるのではなく、タオルなどを挟みましょう。
- 腫れが数日経っても引かない場合や、痛みがひどい場合は歯科医に相談してください。
痛み止めを効かせるコツ

特に歯茎に深く埋まっていた親知らずの抜歯後などは、麻酔が切れた後、強く痛みが出る可能性があります。
痛み止めは痛みが出てきたら飲むではなく、痛み止めをもらったらすぐ1回分飲むのが痛みを避けるコツです。
抜歯直後はまだ麻酔が効いています。痛みが出てからでは痛み止めが効くまでに時間がかかり、場合によっては全く効かないということも。
あらかじめ飲んでおくと、痛みが出ても軽度で済みます。親知らずの深さ・抜歯の難易度にもよるので、飲み始めのタイミングまで歯科医師に確認しておけるとベストです。
抜歯後の異常時の対応
親知らずの抜歯後、通常の経過であれば徐々に痛みや腫れが軽減し、患部が回復していきます。しかし、稀に異常が生じる場合があります。異常が起きた際には早めに対応することが重要です。以下の症状がある場合は、すぐに歯科医に相談してください:
- 出血が止まらない
- 強い痛みが続く、または痛みが増す
- 発熱や膿が出る
- 口が開きにくい、腫れがひどい
1. 強い痛みが続く、または痛みが増す場合

親知らず抜歯後、処方された痛み止めを飲んでも効かない・痛いときは、上記の抜歯後注意事項を再確認し、抜歯してもらった歯科医院に相談しましょう。抜歯後の痛みは1~3日で徐々に軽減していきますが、以下の場合は異常の可能性があります。
- 抜歯後3日以上経過しても痛みが強い。
- 痛みが徐々に増している。
可能性のある原因
- ドライソケット:血餅が形成されず、骨が露出する状態。激しい痛みを伴い、自然治癒が難しいため歯科医の処置が必要です。
対処方法
- 処方された鎮痛剤を使用し、安静にします。
- 症状が改善しない場合はすぐに歯科医に相談してください。ドライソケットの場合、鎮痛剤のほか患部に薬を詰める治療が行われます。
2. 腫れや膿が出る場合
抜歯後の腫れは通常2~3日目がピークですが、次のような症状が見られる場合は感染の可能性があります。
- 腫れが数日以上引かない。
- 患部から膿が出る、または悪臭がする。
- 発熱(38度以上)を伴う。
対処方法
- 抗生物質を処方されている場合は、指示通りに服用を続けてください。
- 症状が悪化する場合は歯科医に連絡し、感染の有無を確認してもらいます。
3. 口が開きにくい(開口障害)の場合
抜歯後、顎の筋肉が一時的に硬直することがありますが、以下の症状には注意が必要です:
- 口がほとんど開かない。
- 顎や頬の筋肉に強い痛みを伴う。
可能性のある原因
- 顎関節周囲の炎症:抜歯の際に周囲の筋肉や組織が影響を受けた場合。
- 感染の広がり:周囲の組織に感染が拡大している可能性。
対処方法
- 温かいタオルで顎の周辺を温め、筋肉をリラックスさせます。
- 症状が改善しない場合は、歯科医に相談し、原因を特定してもらう必要があります。
4. 頭痛や耳の痛みがある場合
親知らず抜歯後に周囲の神経や筋肉が刺激を受けると、頭痛や耳痛を感じることがあります。
- 症状が一時的であれば通常は心配ありませんが、持続する場合は以下の対応を行ってください。
対処方法
- 処方された痛み止めを適切に使用します。
- 温めたり、安静にすることで症状が軽減することがあります。
- 長期間痛みが続く場合や、強い不快感がある場合は歯科医に相談してください。
5. 抜歯した部位の周囲がしびれる場合
抜歯時に神経が一時的に圧迫された場合、次の症状が出ることがあります:
- 唇や頬、舌がしびれる。
- しびれが長時間続く(24時間以上)。
可能性のある原因
- 下顎の親知らず抜歯時に、下歯槽神経が近接している場合に生じることがあります。
対処方法
- 通常は数週間~数か月で自然に回復しますが、回復しない場合や悪化する場合は、歯科医で神経の状態を確認してもらいましょう。
まとめ

親知らずの抜歯後の回復には、適切な対応が不可欠です。出血が続かないようガーゼで圧迫したり、熱い食べ物や硬い食事を避けることで傷口への負担を軽減できます。また、運動や飲酒、喫煙は控え、十分な安静を心がけることが重要です。
痛み止めは、痛みが出る前に服用することで効果を高めます。処方された薬は最後まで飲み切りましょう。抜歯後のケアを守ることで、早期回復が期待できるため、これらの注意事項をしっかり守ることが大切です。